中国、1~5月の地方政府の「借金」額は2.8兆元(約62兆円) どこで使われたか

2024/07/4 07:30

中国は今、財政状況の悪化が続く地方政府が、投資や経済の安定やリスク予防のために、債券発行という合法的な「借金」をする動きが広まっている。

中国財政省が6月27日に発表した地方政府による債券発行および債務額を見ると、1~5月の債券発行額は2兆8213億元(約62兆円)で、うち5月は9036億元(約20兆円)と加速している。

その約2.8兆元(約62兆円)にのぼる金がどこで使われたかというと、財政省によるとおよそ半分の1.37兆元(約30兆円)は、「借金のための借金」、つまり返済すべき債務の元金または現状の債務に充てられる「再融資債券」の発行である。

中国財政省によると、今年1~5月、地方政府で返済すべきの元金は1兆1748億元(約26兆円)で、債券の支払い利息は5227億元(約11.6兆円)である。

そして残りの半分は、主な公益性事業の実施に向ける新規債券(約1.45兆元=約32兆円)の発行に使われ、うち地方特別債が約1.16兆元(約25.7兆円)である。

企業のリスク監視アプリ「企業予警通」によると、これら1~5月の新規特別債のうち約36%が市政や産業パークのインフラ整備に、約21%が地下鉄など鉄道関連、有料道路その他交通インフラの整備に充てられ、特に老朽化住宅の改良、医療保険、農林業、治水工事などに多くあてがわれる。

地方政府にとって特別債は、問題への対応や投資、経済を安定させる重要な政策的手段となっている。安徽省財政庁は5月28日、550件にわたる建設資金を賄うために深セン証券取引所で513.5億元(約1.14兆円)の地方特別債を発行した。これらの事業全体への投資額は6000億元(約13.3兆円)を超える。

1~5月の各地方の発行額を見ると、まちまちではあるがおおむね経済力のある地域の方が多かった。中国財政省によると、その筆頭である広東省の発行額は3277億元(約7.3兆円)と3000億元(約6.6兆円)オーバーで地域別トップであり、2位は山東省で2611億元(約5.8兆円)であった。さらに浙江省、江蘇省、四川省、天津市、河北省、安徽省、湖北省、江西省、河南省が1000億元(約2.2兆円)以上、それ以外は1000億元(約2.2兆円)未満で、青海省はゼロだった。

中国財政省は地方に特別債を割り振るにあたり、最近は債務リスクが少なく事業の準備が整っている地域を多めにしており、豊かな地域への割り当てが多くなっている。

中国財政省によると、 2024年5月末現在、すべての地方政府の債務額は42兆3838億元(約939兆円)で、債券の期間は平均9.2年、金利は平均3.21%となっている。

今年の政府ならびに地方予算の報告を基にした地方政府の債券発行限度額は約4.62兆元(約102兆円)で、1~5月に発行済みの分を除き、あと3.7兆元(約82兆円)分の猶予がある。現段階で発行額は例年より少なめであるが、政府が特別債の発行を急ぐよう求めていることから、今後は加速するものと見られる。

(中国経済新聞)