中国の自動車最大手が経営不振に陥る

2024/07/1 07:30

中国の自動車界で18年間トップの座を守ってきた上海汽車(上汽)が、ここ5年間は販売台数を200万台も落とし時価総額が2700億元ダウンするという事態に陥った。
合弁で成功し合弁で失敗。逆転を狙うにはあまりに時間がなさすぎる。

  1. 5年間で販売が200万台減

上汽は2006年、122.4万台を売りさばいた。
地方の国有自動車メーカーである上汽は、一汽、東風、長安の中央政府系大手3社をごぼう抜きして中国最大の自動車会社となり、この座を18年間守り続けてきた。
自動車界が不景気に陥った2018年も衰えず、一汽と東風の合計にほぼ匹敵する705.17万台を売った。この年中国で売れた新車は、4台に1台が上汽製であった。
しかし、販売台数はこれを境に下り坂に向かい、それから5年連続で前年割れとなっている。
2023年は502.09万台で依然トップを守ったが、5年前と比べると203.08万台の減少である。
上汽は2013年の販売台数が510.58万台で、去年はつまり10年前にも及ばない数だったのである。
言い換えると、「一夜にして10年前に逆戻り」という状態である。

  1. 時価総額は2700億元以上ダウン
    上汽は今、他社と比較すれば最大の自動車会社ではあるが、過去と比較すれば「独走状態」とは言えなくなっている。
    販売台数がピークだった2018年、売上高は9022億元にのぼり、業界内でぶっちぎりの存在だった。他業種と比べても、アリババの3.5倍であり、上海に本社のある企業の売上ランキング上位100社のうち、40位以下全社分の合計に相当した。
    上汽はこの年、純利益は360.1億元であり、同年3月時点で時価総額は4400億元近くに達していた。
    ところが、それから販売は減少の一途をたどり、2023年は売上高7447億元、純利益は141.1億元にまで減った。
    時価は2024年6月7日には1630億元前後で、BYDの4分の1以下、長城汽車の7割強という状態である。
    つまり計算上、上汽は5年間で2700億元も時価が減った。株式市況で「上汽」の銘柄は紙くず同然となったのだ。

3.工場が3か月間レイオフ?
敵対心むき出しの「舌戦」はもうすでに去ったが、販売台数も売上高もトップだった最大手の上汽がなぜ「身分不相応」となってしまったのか。
その理由は、「合弁で成功し合弁で失敗」という単純なものだ。
上汽が18年間にわたり中国NO.1に君臨したのは、間違いなくドイツのVWとアメリカのGMのおかげである。
上汽グループの販売台数は、上汽VW、上汽GM、上汽GM五菱の「三枚看板」に支えられている。上汽は「大木」であるこれら合弁各社に守られ、左うちわで稼ぐ状態が何年も続いた。
しかし、中国はEVが急速に普及し始めて、ガソリン車が中心である合弁各社は次第に斜陽化していった。それまで最も誇りにしていたものが挽回困難なデメリットになっていったのだ。
これら合弁3社の2023年の販売台数は361.91万台で、2018年より約250万台減った。この減少分は上汽グループ全体での減少数量よりも50万台多い。
このうち上汽GMは、今年1~4月の販売台数が39.40%も落ち込み、生産ラインの従業員を2、3か月間レイオフとするなどの噂も出た。
会社側はこれを否定したが、合弁各社が苦境に陥っているという上汽の状態が垣間見える。
日産、ルノーのゴーン元社長は以前に、「中国の自動車メーカーは、外国の自動車メーカーと提携した際にまるで貢献度がない」と述べていた。嫌味な言い方だが、外国との合弁における中国側の地位を物語るものではある。
その合弁に長らく依存してきた上汽は、国内事業がもろくなっている。ガソリン車が今一つで新エネ車への転換もままならない。グループとして、過去の栄光はもう戻らないものとなった。
中国政府は今、EV産業が競争を「勝ち抜く」ために全力を傾け、最有力であるこの業界に対してインセンティブを出している中、ガソリン車メーカーは寒々しい状態になっている。国内大手4社と言われた上汽、第一汽車、東風汽車、広州汽車は、トップの上汽も含めてダメージを被っている。政府系の大手だったこれら4社はこれまで、日本、アメリカ、ドイツ、韓国のメーカーと手を組むことで利益を手に入れていた。中国政府の規定により、外国の自動車会社が中国市場に参入する際は国内メーカーとの合弁が義務付けられていたほか、外国側の出資率は50%以下とされていたのだ。よってこれら4社は、目をつぶってでも合弁相手の売上分が手に入ったのである。
しかし今、これら外国勢のガソリン車が売れなくなった。特に日系車は、今年5月の中国での販売台数はトヨタが13.6%減、ホンダが34.7%減となっており、これがそのまま中国大手4社の業績ダウンにつながっている。中国側提携先も外国企業のために市場を開拓するは事実上不可能であり、結果として「共倒れ」状態に落ちている。
他の中国メーカー数社も、上海汽車と同じ境遇に置かれている。中国政府がEVを後押しすることで、ガソリン車がどんどん売れなくなっている。中国政府は、「片方を支えた故にもう片方が沈む」とはせず、ガソリン車とEVのバランスをとることを考えてしかるべきではないか。

(中国経済新聞)