TSMC、大口ユーザーから3nm品の受注を独占

2024/06/14 17:30

AIサーバーや高性能計算(HPC)の利用、高級スマートフォンからAIスマホへの転換などで、先端プロセスの半導体の需要が急増している。こうした中、半導体の受託生産で世界最大手のTSMC(台湾積体電路製造)は、アップル、クアルコム、エヌビディア(NVIDIA)、AMDの大手4社から3nmシリーズ品の生産を委託されており、2026年まで受注が見通せている状況だという。

TSMCの3nmシリーズは現在、N3、N3E、N3PおよびN3X、N3Aなどがあり、うち2023年第4四半期から本格生産しているN3Eは主にAIアクセレレータ、高級スマホ、データセンターなどでの利用がメインである。またN3Pは2024年後半から本格生産し、2026年にはモバイル機器、家庭用電子機器、基地局、あるいは通信などで必要とされる見込みである。さらにN3X、N3Aは、高性能計算や自動車メーカーなどへのカスタマイズ需要に対応する。

TSMCの3nmシリーズの注文はほぼアップル、クアルコム、エヌビディア、AMDの大手4社で占められ、これら各社はいずれも今年から先進半導体ですべて3nmプロセスを導入するという。アップルが今年発表したM4シリーズのプロセッサーや、近々発売の次世代型プロセッサーA18シリーズ、クアルコムが今年後半発表予定の主力スマホSnapdragon 8 Gen4、エヌビディアが発表予定のビデオカードRTX50シリーズ、AMDが今年後半に発表する5世代目プロセッサーEPYC Turin、来年発表予定のMI350シリーズ、台湾の大手半導体メーカーMediaTek(メディアテック)が今年後半に出す主力級モバイル機器9400など、いずれもTSMCの3nmプロセスを採用している。

TSMCは2024年の生産体制を2023年の4倍とする予定だが、それでも不十分であり、今後2年間の生産や供給を確保するため相次ぎ設備拡張策を打ち出している。先ごろの発表会では「旺盛な需要に対する方針は、5nmの設備を部分的に3nm品製造に切り替えることだ」と表明した。業界内では3nmシリーズの生産量は今後も増え続け、月間生産量は12万枚ないし18万枚となる見られている。

TSMCはこれまで、取引先関連の噂はコメントを控えている。受注の殺到を受けて値上げに走り「価値に反映」するのか、との問いに対しては、「値段については常に、機会ではなく方針に従ったものとしており、価値をもたらすために引き続き取引先と緊密に連携していく」と強調している。

業界内では、「TSMCはみだりに値上げするような会社ではなく、価値がそのまま値上げにつながることもない。先進プロセスを抱えてはいるが、相手に価値を示すのに様々な方法を有している」と見られている。

ただし、モルガンチェースの最新レポートによると、旺盛な需要を前にしたTSMCは2025年初めにN3/N5を2-6%、CoWoSは8%~10%値上げすると予想している。

(中国経済新聞)