米国、再びファーウェイに制裁措置を発表

2024/06/4 15:30

5月7日、アメリカ政府は、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への半導体供給を米インテルと同クアルコムに認める輸出許可を取り消した。ファーウェイに対して圧力を強める米国の新たな動きとなった。

アメリカ商務省は「一部の許可証を取り消した」と表明したが、会社名は触れなかった。

 事情を知る複数の関係者によると、米商務省がとった新たな措置はファーウェイのノートパソコンとスマートフォン向けの半導体供給に影響するとみられる。

 許可取り消しは、現在もインテルの半導体に依存しているファーウェイに打撃を与え、同社と取引のある米国のサプライヤーにも影響する可能性がある。

 ファーウェイは先月、インテルの新型プロセッサを搭載した初の人工知能(AI)対応ノートパソコンを発表し、共和党議員らがインテルの半導体をファーウェイに売却するのを許していると強く反発。

 米議会では、ファーウェイに対してより厳しい行動を取るようバイデン政権に求める共和党中国タカ派の圧力が強まっていた。

米連邦通信委員会(FCC)、ファーウェイなどの機器の排除を求める

 アメリカの連邦通信委員会(FCC)はこのほど、「国内の無線通信網から中国製の機器を排除するとしたら、FCCが資金援助をしている通信会社のうち40%近くがさらなる支援金を必要とする」と発表した。機器を「撤去・交換」するのにかかる経費は49・8億ドルと見られるが、国会で認可された額は19億ドルにとどまっているという。

 FCCのジェシカ・ローゼンウォーセル委員長は国会に対し、至急補助金を追加するよう求めている。通信事業者から「補助金不足でネットワークを閉鎖するなど深刻な結果を招きかねない」との訴えを受けているとのことである。

 アメリカ国会は2019年、FCCに対し、「補助金を受給している通信事業者に対してネットワークから中国製の機器を排除させること」と求めた。これを受けFCCは、まずユーザー数が200万人以下の事業者向けに支援金を計上したが、実際に事業者が手にしたのは切り替え費用の39・5%にとどまった。ホワイトハウスは2023年10月に31億ドル分の追加援助を求めたが、国会はまだ腰を上げていない。

 FCCによると、通信事業者は現時点で、2024年5月29日から2025年2月4日の間に中国メーカーであるファーウェイおよびZTE製の機器やサービスをすべて使用中止とし、処分するよう求められている。この対象となっているある事業者は、「農村部や辺鄙なところまで広くカバーしている上、モバイルブロードバンドが唯一の通信手段となっているケースも多く、ネットワークの一部またはすべてを閉鎖するとプロバイダが消滅する地域も出てくる」と表明している。

 FCCは2020年に、ファーウェイとZTEを「国の安全を脅かす」ものとみなし、通信事業者に対し、公的資金によるこれら2社からの購買を禁止した。 

米商務省はファーウェイに半導体を供給するための輸出許可を取り消し

 インテルはファーウェイに対してノートパソコン用の半導体を、クアルコムは同じく携帯電話用の半導体を供給している。2019年からファーウェイへの制裁が実施された後も特別許可により供給を続けていて、輸出額は数10億ドルに達するとみられる。

 この特別許可はアメリカでかねてから論議を呼んでいた。ファーウェイは、自社開発したハイシリコン製の5G半導体の出荷が途絶えて以降、クアルコムの4G半導体「スナップドラゴン」を携帯電話用に利用しており、2023年8月のMate60シリーズ以降は半導体について主導権を取り戻していた。ファーウェイはまた先月、インテルのプロセッサーCore Uitra9を搭載した新型のノートパソコン「MateBook X Pro」を発表した。

 今回の輸出許可取り消しについて、ファーウェイからすればクアルコムの分よりインテルのPC用半導体を失う方が痛手である。クアルコムについてはMate60シリーズを発表してからとの取引が急減しており、同社の取引先上位10社から外れた。刊行誌の「財経」によると、ファーウェイの携帯電話用半導体の出荷は、最近のPura70シリーズの供給具合から見てほぼ安定しているという。またクアルコムは今でもファーウェイに5G特許を付与しており、2025年度が期限となっているこの特許契約についてすでに延長に向けての協議を進めているという。

 ファーウェイはその一方、PC用の半導体については代替品探しが困難である。市場調査会社のCanalysによると、2023年第4四半期のPCプロセッサーのシェアはインテルが78%を占めており、2位のANDは13%にとどまっている。かねてからインテルの半導体を使っているファーウェイは、リサーチ会社のGFXによると、2023年前半のノートパソコン用半導体の使用割合はインテル品が90・7%に達している。

米国企業にも打撃

 インテルからすれば、ファーウェイへの供給が止まればかなりの痛手となる。ファーウェイは取引先上位6社には入っていないが成長著しい存在である、Cあなんlysによると、2023年は中国製のデスクトップおよびノートパソコンのシェアが17%も落ちた中、ファーウェイは出荷数量が前年比11%増の398万台で、市場シェアは10%で3位であり、上位5社のうちただ一つ前年増を果たした。なお市場シェア1位はレノボで38%、2位はHPで10%である。

 中国商務省の報道官は5月8日に取材に対し、「アメリカは国の安全という概念を拡大して経済や貿易の問題を政治化し、輸出規制を乱用して、特定の中国企業を相手に無理な制裁や締め付けを繰り返している。中国は断固として反対だ」と答えた。その上で、「アメリカは民間用の半導体の中国輸出を制限して特定の中国企業への供給を絶っているが、これは典型的な経済的脅迫であり、WTOのルール違反している上にアメリカの企業の利益も損なわれる。こうした行為は『中国のデカップリングは求めない』『中国の成長を抑えない』という約束に反する上に、『国の安全を正確に定める』という主張の逆を行くものだ。中国は、必要な措置をすべて講じた上で企業の正当な権益を断固として維持する」と述べている。

(中国経済新聞)