アリエクスプレス(AliExpress)やTemuを代表とする中国の越境ECプラットフォームが今、世界4番目のEコマース市場である韓国で、勢力地図を塗り替えている。
韓国の調査会社 Wiseapp Retail Goodsによると、アリエクスプレスは今年3月のアクティブユーザー数 (MAU)は前年比114%増の887万となり、韓国で国内Eコマース大手のGmarketや11stを超えて2番手の位置に出た。韓国のEコマース上位3社に外国企業がランクインしたのは初めてという。またTemuは、去年8月に韓国に進出してから、今年3月の時点でMAUが1,508%も増えて829 万人に達している。
これら中国勢2社の躍進を受けた韓国で、国内のEコマース大手が業績を落としている。最大手のCoupangは、3月はシェアトップを維持したもののMAUは 3086 万人で去年より5%の増加にとどまった。今年第1四半期の売上高は前年比23%増の71億ドルであったが、9090万ドルの黒字を計上した去年同期から一転して2400万ドルの赤字計上となっている。
対外経済貿易大学朝鮮半島問題研究センターの非常勤研究員である権小星氏は、新種の飲料や激辛鍋、フルーツ菓子、Eコマースといった中国ものが韓国に広まっており、ウォン安や物価上昇など景気後退ムードの中で「つつましさ」を求める若者たちの消費需要を満たしていると見ている。また、クリエイティブ産業が特に発達している韓国では、YouToberを代表とする数多くのKOLが中国のEコマースアプリで購入した品物を推薦しており、消費者の間での認知度が高まっている。
韓国統計局は2月1日、2023年のEコマースの取引総額は東南アジア6か国の合計を超えて過去最高となる227.35兆ウォン(1718.9億ドル)となったと発表した。これについて「Business Korea」は、アフターコロナで観光需要が急増していること、また越境ECの取引額が急激に増えていることが主因と見ている。「外国からの直接購買額について、中国からが3.29兆ウォンで前年より121.2%も増え、全体のほぼ半分となったが、去年トップだったアメリカは前年より7.3%減って1.86兆ウォンだった」という。つまり韓国では、中国が初めてアメリカを抜いて越境ECの最大の輸入先となったのである。
こうした追い風に乗って、アリエクスプレスも韓国で現地の物流会社との提携を拡大している。CJ大韓通運のほか、今年は韓進、ロッテグローバルロジス、韓国郵政といった大手と契約を結んだ。韓国の物流会社を対象にしたアリエクスプレスの先ごろの入札文書によると、2024年3月~2025年3月の韓国の配達件数はおよそ1,235万件と見ている。
またTemuも韓国で、同じくデジタルマーケティングの電撃戦や大幅割引券で市場開拓を急いでいる。Instagram、YouTube、GoogleなどのSNSや検索エンジンで露出させたり、SBSテレビのバラエティー番組で関接広告(PPL)を出したりするなど、利用者獲得に励んでいる。
アリエクスプレスとTemuはまた、現地での取り組みも一段と強化している。韓国の通信社である聯合ニュースは3月14日、アリババが韓国政府に対し、向こう3年間で韓国での事業拡大に向けて11億ドルを投資する事業計画書を提出したと報じた。これにより直接または間接的に3000人分の雇用が生じるという。またこの計画書では、アリババは今年、韓国に総合物流センターを建設するほか、商品の国外販売の支援に向けてAliExpress、Lazada、Miraviaなど傘下のEコマースプラットフォームの活用へ1億ドルを投じるという。3年間で現地の中小企業5万社の輸出をサポートするものである。
拼多多は4月2日、2月23日にソウルで、Eコマースおよび関連事業を手掛ける 「WhaleCo,Korea Limited」という会社を正式に設立したと発表した。「現地のサプライヤーと提携するなど、ローカライズ企業としての役割を徐々に発揮していく」とのことである。
中国の越境ECの韓国での動向が引き続き注目されるところである。