AI論文のうちサステナビリティー関連はわずか2.5% 「恥ずべきこと」と研究者

2024/05/3 14:30

人工知能(AI)長期研究センターのトップである曽毅(Ceng Yi)氏は、先ごろ北京の中関村で行われたAIパイオニアフォーラムで、情報通信技術(ICT)やAIに関する英語の論文およそ1000万件を分析したところ、サステナビリティー(持続可能性)に関するものは2.5%のみで、「恥ずべきことだ」と指摘した。AIの研究や活用は利益のみを求めずに、世界的なサステナビリティーなど社会的なテーマに広く目を向けるべきだ と強調した。

フォーラムで曽氏は、数少ないサステナブル関連の研究はほとんどが利益の出やすい健康と教育に関するものと指摘し、そうでない分野についてAIがおろそかになっていることを批判した。これでは世界の成長が妨げられると見ている。

曽氏はまた、エコロジー共生や文化の受け継ぎなどにおけるAIの潜在的役割についても触れ、「チーム内で人と自然の共生関係の図解を描く中でのAIの役割や、世界の文化遺産の発信や接続におけるAIの役割を研究している」と述べた。

また、失業問題やビッグデータの大きな計算力に伴うエネルギー消費問題など、AIが普及する中での潜在的リスクにも触れ、脱炭素化を後押しするために環境型エネルギーや低炭素で効率的なやり方を導入すべきと強調した。

曽氏はまた、AIのリスク管理問題について、世界的に見てアメリカがリーダー的な存在にあると述べた。AIが世界に広まる中で、中国はやはり国際統治や世界の成長を重視すべきと見ている。

長期研究センターは、サステナビリティーでAIが一段と効力を発揮ための「行動提案」を発表した。サステナビリティーにおけるAIの活用推進に向けて具体的な策を講じる一方で、雇用問題や環境への影響といった潜在する悪影響に注意するよう呼びかけるものである。

曽氏は最後に、「AIは、人間社会をリードするものでなく補助的なもので、エコロジーとの共存を支える上でプラスになるように、責任をもって慎重に普及や活用を進めるべきだ」と強調した。AIコミュニティーや意思決定者に対し、サステナビリティーにおける世界的なテーマにもっと目を向け、取り組むようにとの呼びかけである。

(中国経済新聞)