中国・中央財経大学金融学の呉偎立准教授と、長江商学院金融学特別院長の特任教授である欧陽輝上級副院長が、中国経済と日本の1990年代の経済低迷期の違いを分析した文章を発表した。
中国経済はこのところ、物価上昇や成長が鈍く見通しも暗くなっており、「日本化」するのではないか、との懸念感が広まっている。1990年代初めにバブルがはじけ、長期にわたり景気の低迷やデフレが続く「失われた30年」を経験した日本と比べ、中国は伸び悩んではいるが明確な違いがあると見ている。
中国のGDP成長率は、2012年の8%から最近は4.1%まで後退しているが、急降下した日本の90年代に比べると緩やかな落ち込みである上、2024年は安定化するとの予測が示されている。また中国は、消費者物価指数(CPI)が四半期単位で3期連続の前年割れとなったが、1998年のアジア金融危機ほど深刻でもなく、消費者や企業の見通しも良くはないが極度の悲観状態でもない。
また、日本の90年代は資本残高の伸び悩みで景気の低迷を引き起こしたが、中国は不動産投資が落ち込む一方で製造業やインフラ投資は増え、投資額全体の減少を食い止めている。社会の高齢化が課題となりそうではあるが、目下の影響はさしたるものではない。
貸借対照表について、中国は不動産や株式市況で動きもあったが日本のような急降下ではない。不動産価格は、政府の介入措置により乱高下せずにある程度は安定した状態である。企業や個人のレバレッジもまずまずで、数値的に極端な悪化は見られない。
また、日本の場合はサービス業でインフレが続く中のデフレ長期化で、内需の長期不振が示されているが、中国のデフレは食品を中心に商品の面で顕在化しており、世界の需給バランスに絡んでいる。中国ではサービス業は好調であり、この点については十分な期待が持てそうである。
中国経済は今、低迷期を迎えてはいるが、日本のような長期的な停滞となるとは限らない。ただし、誤った政策を講じると問題が長引いてしまう恐れもある。中国政府は経済を支えるため、前向きな財政や通貨政策、そして適時な不良資産の処理をする必要がある。
中国と日本の根本的な違いは、中国の経済成長はまだ初級段階であり、市場規模も潜在力も大きく、今なお都市化が続き、完全な自由化に至っていないということである。したがって中国は、中間層が所得を減らすことなく経済成長を維持する条件がある。ただし、人口減や地政学的な問題など構造的な要因については、政策的な改革や国際連携といった総合的な対応策を講じる必要がある。
(中国経済新聞)