2024年の春節枠映画、興収1252億円を突破 トップの「熱辣滚燙」は なぜ好評なのか

2024/02/15 21:30

中国の映画興行データ分析アプリ「灯塔専業版」によると、2024年春節枠(2月10日—2月17日)の興行収入(前売り含む)が2月15日11時11分に60億元(1252億円)を超えた。ベスト3の作品は「熱辣滚燙」(YOLO==You only live once)、「飛馳人生2」(Pegasus 2)、「熊出没·逆転時空」(Boonie Bears:Time Twist)となっている。

春節枠の映画は、「熱辣滚燙」が興行収入20.8億元(434億円)で春節枠トップに立っており、灯塔専業版によるとAIの予測値として41億元(855億円)以上に達する見込みという。

この成績を受け、リリース元である新麗電影と閲文影視の背後にある閲文集団は2月14日、株価が6.99%も値上がりした。2月15日の時点では(HK0772)21.45香港ドル/株で1.13%の値上がり、時価は229.8億香港ドルとなっている。

映画「熱辣滚燙」はなぜ好評なのか

「熱辣滚燙」は、2014年の日本の映画「100円の恋」をリメイクしたもので、コメディ出身の賈玲が自らメガホンを執り、仕事も付き合いもない30代の「引きこもり女」である楽瑩を演じた。生活で何度もくじけながらも最後はボクシングで人生をがらり一新させる物語である。

女優賈玲
賈玲は1982年生まれで中央戯劇学院の出身、2010年に漫才師として中国中央テレビの春節年越し番組「春晚」に出演したことで全国区になり、2021年には初めて監督を務めた映画「こんにちは、私のお母さん」が大ヒットした。
賈玲は、「熱辣滚燙」の封切り前にブログで、役柄のために50キロ痩せたと表明した。ただし、「この映画は減量とは無関係で、ボクシングともさほど関係ない。善良な人が自分自身を探り、愛していくことを覚える姿を描いたものだ……そこには過去の私がいて、新しい私もいて、そのどちらも好きになってほしい」と強調している。
この映画を評価するコメントはみな、自分を鍛え、愛するとのテーマに焦点を当てている。中国のソーシャルカルチャーサイト「豆瓣」では「8点」との評価が下された。最高級である五つ星レビューとして、「ヒロインは傷つけられた人に復讐をせずに、強い人間になっていった。自分を傷つけた人を眼中に置かなかったからこそ、本当に強い人間になったのだ」とコメントされた。

また、女性監督ならではのアングルに着目するコメントもあった。別の五つ星レビューとして、「われわれは賈玲が必要で、女性監督が必要で、女性プロデューサーが必要で、女性役者が必要で、女性スタッフが必要だ。また、女性の叙述が必要で、女性のアングルが必要だ」というコメントがあった。
「熱辣滚燙」は政府系メディアにも評価されている。「光明日報」は、ヒロインが復讐をエネルギーとしなかったことについて、「楽瑩がボクシングをしたのは単に人生のビジョンのためであって、誰かをやっつけたりかっこよく思われたりするためではない。これこそリアルな人生に近いものだ」と称賛のコメントを残している。

「熱辣滚燙」をリリースした閲文集団のCEO兼総裁の侯暁楠氏は紅星資本局に対し、「『いい話』は世界的な言葉だ。自分を愛し生きていくという共通軸が、この作品が文化を超えて世界から共感を招く基盤となっている」と述べている。

(中国経済新聞)