2024年1月1日、中国のインターネット検索大手「バイドゥ」は、2020年11月15日に決定していた約36億ドル(約5159億円)での「歓聚集団」傘下のライブ配信プラットフォーム「YY直播」の買収計画について、取引条件があわず中止すると発表した。注目されていた巨額の買収案件は見送りとなった。業界では3年以上も取り沙汰されていたが、買収価格が不適当だとの見方が多数を占めている。
バイドゥは当初、YYの安定したライブ商品体系やキャスター陣について興味を示しており、YYを買収しればこれまで手薄だった配信分野が補強されてアクセスが増え、競争力も一段と高まると見ていた。またYYも、バイドゥの膨大なユーザーを取り込むことで事業の早期成長やバリューアップが果たせると期待していた。
しかし、YYが打ち立てたショー形式の配信モデルが、急成長するゲームやショートビデオに対抗できなくなった。YYはこの分野でトップランナーだったが、利益モデルやユーザーの愛着感が後退し、競争も一段と激化していった。また配信事業自体がさほど伸びなくなり、ユーザーは快手やTiktokなどショートビデオに流れ、YYの立ち位置も薄らいでいった。
さらに、歓聚集団は海外市場が新たな成長の舞台となり、海外での配信アプリ・BIGOの売上高が会社の全売上の80%以上を占めている。こうした変化は配信事業における新たな傾向であり、会社の事業構造改革の現れでもある。
今回の買収計画を中止したバイドゥは、すでに事業の重心を全面的にAIに傾けている。2022年11月にChatGPTが発表されてから、世界のテック企業がこぞってAIでの競争に挑んでいる。この中でバイドゥは、影響力を根付かせ拡大するため、すべての商品を見直ししているところである。
今回の買収中止はすなわち、配信業界の目まぐるしい変貌やテック大手の事業改革を象徴したものである。さらには、技術やエンタメ市場がこれだけ変化している故、数十億ドルという巨額の取引でさえ諸般の事情で見送られることもある、という事実を語っている。
(中国経済新聞)