ファーウェイの孟晚舟輪番会長は、今年の社内の全接続会議のテーマ演説で、全面的なスマート化(All Intelligence)という戦略を打ち出した。孟会長は、「データが急激に増え、スマート技術が急成長して、そこに世の中が突入していく中、AIという歴史的な好機を捉えてあらゆる産業のスマート化を急ぐべきだ」と主張した。
また同じくIDCのレポートでも、中国のICT市場について、今後5年間で新手の技術による投資が全体の半分以上である2兆ドルに達すると予測している。このうち、製造業におけるインテリジェント化への需要がかなりの部分を占めるという。AIを至る所で日常の生産場面に接続させる、これが今まさに製造業における喫緊で避けられない課題となっている。
製造業とAIを接続させる策について孟会長は、全面的スマート化戦略を分析する中で、すべての対象を接続させる、すべての利用をパターン化する、すべての意思決定をコンピューティング化する、という3つの目標を打ち出した。四分儀は、この3点は何らかの程度で最近のスマート化製造への改革における一般的な参考として、製造業における今後のAI化への改革のステップやその道のり、改革の効果を測るものになりうると見ている。
今回は参考事例として、TSMCを挙げてみる。同社は先進製造業の代表格で、AIを第3ステップのスマート製造やデジタル化への大切な部分と見なし、技術の進歩、スマート製造、作業場所の近代化、デジタルサプライチェーン管理、チームワーク刷新といった面で大量かつ本格的にAIツールを運用する予定であり、かつ次世代AIのトレンドを抱き込んで多次元での日常の生産体系への接続を目指している。
TSMCは、コロナ禍にあった2020年からデジタル化を急ぎ始めた。本社エリアで各工場を建設する際、以前はそれぞれにデータセンターを設けてIT管理者を派遣していたが、今は専門スタッフが各種の新しいインフラ技術を運用し、データセンターをソフトウェア定義により本物のプライベートクラウドに変えた上、5G、IoT、AIOpsなどの導入を進めて革新を続けるインフラ利用に対応している。
例えば、ソフトウェア開発スタッフのサポートで工場事務のIoTプラットフォームを築いた。これはエンド・ツー・エンドの統合利用であり、センサーによりフルタイムで生産環境のデータを集め、Hadoopを使ってそのデータを訓練させ、AIパターンを形成する。エッジコンピューティングにおけるリアルタイムのモニタリングに対応するほか、クラウド側のビッグデータも後の良品率分析に使われる。
すべての利用がパターン化され、大規模言語モデルによってスマート利用を速やかに個人や家庭、また各組織へと浸透させる。こういった目標は製造業からすれば、機敏な開発やスマート理念の大規模言語モデル時代における延長線である。実践面で見るとそれは大規模言語モデルなのであり、深まりゆくIT化革新に接続されて、“The Fab Runs on Code(コードを行くウェハー工場)”を“The Fab Runs on Model”に格上げしている。
TSMCは、ソフトウェア製品と呼ばれる一連の自社システムがある。一つは工程良品率の分析、品質管理、事務、MES(生産管理システム)、設備の制御や自動化、IT運用プラットフォーム、セキュリティー、資料といった工場の運営に関わるもので、もう一種はCRM、ERP、eBusiness、Product Data Master、サプライチェーン、人材資源、サプライヤー管理といった業務に関わるものである。
ソフトウェア製品の機能性が向上している背景として、スタッフがクラウドネイティブやオープンソースを導入することで製品の世代交代を加速させていることが挙げられる。あるソフトウェア開発部門のリーダーは以前、メディアを前に、開発が従来のウォーターフォール・モデルからDevOpsモデルに変わっていると述べた。これにより新製品の発表間隔が、それまでの2-3か月に1回から、毎週、あるいは1日1回に早まっているという。
これはITシステムのデジタル化であると見られている。機敏な開発でITが社内で一段と重要な責任を担えるようになり、社員のスキルや会社の生産力の目標到達が近づいてくる。TSMCのCIOである林宏達氏はしばしば口にするのは、「製造の自動化でTSMCの運営形態全体が変わってくるほか、ソフトウェアの運用でチップ工場の製造がScale Digitallyになる」といったことである。
TSMCはまた、AI大規模言語モデルの拡大で新たな効率アップの方策も見出した。今年5月、コーディングや翻訳、業務報告の作成を手助けする自社開発の対話型ロボット「tGenie」を発表した。生産、資材、販売、人材資源などの部署で最適な管理ができるように、バーチャルな資料を基に良品率、在庫、価格、社員の離職率などの予測にも使われるものである。
今回の成果は、100人以上のエンジニアが半年かけて開発した結果である。2017年にAI人材の育成に取りかかり、社内でセミナーを開催した上、専門家を招いてパターンを開発し、知識ベースを築いた。2018年にはIT人材1000人とロボット学習の専門家300人が揃い、スケジュールや人の手配、人やマシンの生産力、工程とマシンの制御、品質防御やロボットの制御といった面でAI利用を果たしている。
スマート化工場で意思決定をコンピューティング化
スマート製造センターの副処長である黄楙智氏は、海外の経済関連メディアの取材に対し、「資料集めで標準化に至ったことは、半導体製造のスマート化への的第一歩となった。続けて大規模に資料を収集し分析した後、ソフトウェアで生産計画、品質管理、異常の予測、工程の最適化を実行すれば、実体マシンの制御というバーチャル接続を果たし、スマート製造が実現する」と述べた。
すべての対象を接続して利用をパターン化するという最終目標は、意思決定を支え、アルゴリズムの向上によってデータのさらなる潜在力を発散するものである。2020年末までに、工程、量産、業務、IT運営などの各場面でAIをサポート役として導入している。工程については、複雑で次元の高いものの開発を手伝い、量産についてはウェハーの欠陥の分析や生産の最適化に利用されている。
TSMCでは、AIは7nmと5nmの工程を支える英雄的存在と見られている。7nm工程における抵抗は28nm工程の21倍、5nm工程では同じく48倍であり、データは一段と複雑になって、エンジニアの手ではマシンや設備のテストの実行が難しくなっている。そこでマシンのサポートが必要となり、5nm工程は今やパソコンでテストを行っている。
TSMCでは、マシンでのテストのほか、人への指示もシステムとアルゴリズムの結びつきにより一段と正確に実行している。1か月に30万個のウェハーを生産する工場に3000台のマシンがあり、1日800万件の指示を下すことができる。大口データやAIの支えによりシステムで1分以内にベストな生産パターンをはじき出し、納期遵守率は99.5%、生産間隔も1-1.2日となっている。
生産の際には、自社開発したシーリング工場専用のMESが、即時の結晶レベル情報、適時の調達や移動の指示、全面的な欠陥の差し止めや仕分け、生産量の予測や最適化を施す。工程プロセスでは、生産量と品質の制御を自動化して、欠陥を差し止めて仕分けするという自動欠陥分類(ADC)を果たす。またHITLや先進アルゴリズムの良品率分析エンジンにより欠陥を検出し、その材料を正確に分離する。
台湾の新竹市にある6か所のシーリングテスト工場は、スマート工場の建設を進めているTSMCの集大成となっている。ここでは、人の手配、人やマシンによる生産、工程、マシン制御について、AI技術を統合させ、全面的なスマート化生産を果たしている。またハード面についても、スマート移動装置、IoT、移動式ロボットが備わり、AIによる資材の搬送を支えている。
AI時代を前にした今、「工場をよりスマートに」という命題は、自動化を果たすことだけでなく、デジタル化をベースにしてマシン、プロセス、人がいずれも作業の内容に適した補佐役を持つことも指す。林氏はこれについて、「現在の製造業のインテリジェント化は、単なる寄せ集め的なITの整備ではダメ。ソフトウェア会社の視点から工場のあり方を見つめることで、サプライチェーンや収益構造全体の規模拡大を支えなくてはいけない」と述べている。
(中国経済新聞)