中国の湖南省長沙市で4月29日の昼、住民が建てた8階建てのビルが倒壊し、23人が閉じ込められ、39人と連絡が取れなくなった。
5月3日4時15分、88時間閉じ込められていた21歳の女性の円さん(仮名)が、この事故の9人目の救出者となった。
建物は8階建てで、このうち何階かは旅館となっていた。事故発生当時はベッドに寝ていた円さんだったが、そばにある急須の水で命が救えると見て、「毎回一口だけ」と決めて飲み始めた。救い出された時もまだ水は残っていた。
閉じ込められた4日間近い間、昼夜の温度差もあり、ベッドの布団も「命綱」となった。
円さんは水を飲み、体温を維持したほか、救助隊が近くにいるか常に注意し、絶えずSOSを送った。近くで物音が聞こえた時は、固い物で壁を叩いた。
21歳の円さんは、SOSをむやみには出さなかった。外がざわついている時は叩かず、救助隊員が近くにいるか、静かな時に、発見してもらえるようにリズムよく叩いた。
携帯電話をうまく利用したのも功を奏した。電波は切れていたが日付と時間は見えたので、どのくらい閉じ込められたかが分かり、さほど焦らなかった。電池切れを防ぐためにほとんどロック解除をせず、ちらりと時間を見るにとどめていた。救出時もバッテリーは残っていた。
落ち着いて過ごした若い彼女は結局、救い出された。消防局は、「奇跡的に助かるには人頼みだけでなく自力での対応も必要で、こうした意識や対応方法を覚えておくことが大事だ」と訴えている。
この事故は5月4日現在、10人が救出されている。
(中国経済新聞)