伊藤忠商事、51年に渡る中国での歩みと江蘇省での展望

2023/06/23 10:38

「つい先ほどまで、江蘇省での新しい投資プロジェクトに関して同僚と話し合いをしていました。」流暢な中国語で記者に話しかけるのは、伊藤忠商事株式会社(以下、伊藤忠)の執行役員で東アジア総代表を務める斎藤晃氏だ。

斎藤氏は、1995年以来これまでに12年以上の中国駐在経験があり、2022年からは執行役員兼東アジア総代表として4度目となる中国での生活を始めている。そして、これまでに改革開放政策によって大きく変化を遂げる中国を伊藤忠とともに見続けてきた一人だ。

日本と中国の国交が正常化したのは1972年9月29日。それより半年前の同年3月上旬、当時の伊藤忠社長であった越後正一氏は日本経済代表団の団長として訪中。伊藤忠は中国政府から「友好商社」と認定され、総合商社として初めてとなる対中国貿易を始めた。1979年には北京事務所を開設、続けて上海、広州、大連、天津、南京、四川、深圳などでも事務所を設立し中国での事業を拡大していった。そして1993年に海外拠点となる伊藤忠(中国)集団有限公司を北京に設立。現在では、繊維、機械、エネルギー、化学品、食料、金属、生活資材、住生活、情報、金融など各分野において、国際貿易、国内貿易、投資など幅広いビジネスを展開している。また2005年には中国商務部より国家級「地区総部」の資格認定を受け、一部の商品を除く、あらゆる商品を中国で販売、輸出入、代理業務などを行うことを許可された初の総合総社となった。

伊藤忠商事が中国市場に進出した当初は、日本および諸外国の製品や原材料を中国へ輸出するのが事業の中心であった。だが近年、中国における生産技術の急速な発展に伴い、伊藤忠を通じて中国の製品を日本や海外の市場へ販売するというケースが大幅に増え、「メイド・イン・チャイナ」と呼ばれた世界の工場という立場から「クリエイテッド・イン・チャイナ」と呼ばれるモノを創造し生み出すという立場への転換が進んでいる。また、ここ数年世界をリードする先進的なビジネスモデルが続々と生まれており、伊藤忠は、今後さらに中国を拠点とした国際的な協力事案の創出に向けての取り組みを計画している。

現在、北京の伊藤忠商事アジア総代表室には、筆で書かれた「和平共処、世代友好、互利合作、共同発展」の文字が掲げられている。伊藤忠は半世紀に渡る中国との協力関係の中で、この言葉に忠実であるとともに中国での地歩を固めて来た。

こうした中国での歩みの中で、今、伊藤忠の発展にとって最も重要なのが江蘇省だ。現在、伊藤忠は新エネルギー、新素材、自動車用電池などの分野で江蘇省の企業と協力関係を築いており、繊維、機械、化学品、物流、衛生製品分野へのさらなる投資を拡大している。江蘇省は、交通の利便性が高く、国有企業、民間企業、外資系企業が多く集まり、特に石油、化学、繊維、電子材料分野での産業チェーンを構築している。

斎藤氏は2022年に東アジア総代表に就任後、同年7月に蘇州で開催された「ASEAN+3(日中韓)産業サプライチェーンフォーラム・東アジア企業家太湖フォーラム」へ参加。江蘇省とのグリーン低炭素・新エネルギー分野での協力関係を深め、伊藤忠の世界貿易ネットワークを活用し、今後江蘇省企業の海外市場での販路拡大や海外投資活動に協力したいと考えている。また、将来的には医療・高齢者サービスやデジタル経済などの分野でも江蘇省企業と協力関係を築き、伊藤忠は江蘇省とともに新たな未来を切り開いていくことを期待している。

(中国経済新聞)