中国のサービス貿易をめぐる国際交流の舞台、「2026年中国国際サービス貿易交易会(CIFTIS)」が9月9日から13日まで、北京市の首鋼園で開催されている。
「十五五(第15次5カ年計画)」のスタートとなる2026年の国家級・総合型サービス貿易展示会として、今回は90の国・地域、国際機関が出展・イベントを開催。1800社を超える企業がリアル会場に参加し、人工知能(AI)、大規模言語モデル、医療、文化、グリーン技術など、さまざまな分野で新技術や新サービスが披露されている。

2025年9月、習近平国家主席は2025年中国国際サービス貿易交易会への祝賀メッセージで、中国は各国とともに世界のサービス貿易の開放・イノベーション協力を推進し、開放型世界経済を構築していくとの姿勢を示した。
今回のCIFTISは、こうした中国の「高水準の対外開放」を具体的に示す場として、国内外から注目を集めている。
今年の主賓国はノルウェー。主賓省には広西チワン族自治区が選ばれた。首鋼園1号館のノルウェー展示エリアでは、「海洋・健康・栄養」「グリーン転換・産業技術」「デザイン・ライフスタイル」などをテーマに、同国の特色ある技術や製品が紹介されている。
ノルウェー大使館の商務参事官で、ノルウェー・イノベーションの中国責任者を務めるハンニング氏は会見で、中国はノルウェーにとってアジア最大の貿易相手国であり、約160社のノルウェー企業が中国で事業を展開していると説明。「CIFTISを通じて、今後さらに協力分野を広げたい」と期待を示した。
今年の大きな特徴の一つが、テーマ展示の中に初めて設けられた「中国サービス事例展」だ。

中国国内のサービス貿易における革新的な取り組みを紹介する140余りの事例が集められ、サービス貿易12分野をカバーする。なかでもAI、大規模モデル、AIエージェントなどを中核技術とする事例が全体の約4割を占める。
北京市商務局の朴学東局長は、すでに一部の中国サービスが国際市場で地位を確立しており、「中国サービスの海外展開が力強く進んでいることを示している」と説明した。
また、アリババ、新聯元創など100社を超える企業・機関が、AI、医療・健康、文化コンテンツの海外展開、グリーン・低炭素などをテーマに、100件を超える新製品・新サービスを発表する。
世界知的所有権機関(WIPO)がグローバル・サービス貿易サミットの共同主催者として初めて参加したことも、今回の国際性を象徴している。
中国企業だけでなく、海外企業も自社の最新技術やサービスを相次いで展示している。
香港テレコムは、付加価値通信事業の対外開放拡大の試行対象となった香港系企業として、AIを活用した製品運営やグローバルネットワーク資源サービスを紹介。
仏シュナイダーエレクトリックは、製品や設備の導入から運用・維持までをカバーする「ライフサイクル型ワンストップサービス」を展示した。
米クアルコムは、6Gセンシングとインテリジェント分類、AIエージェントと拡張現実(AR)の体験、エンド・ツー・エンドの6Gプロトタイプシステムなどを披露している。
CIFTISは2012年の開始以来、14年の歩みを重ねてきた。第1回の展示面積は約5万平方メートルだったが、現在では首鋼園全体を舞台とする大規模な国際イベントへと成長。サービス貿易分野では世界最大規模の総合型展示会となっている。
今年は首鋼園で11の視察ルートを設定するほか、文化公演や消費マーケットなど74の関連イベントを開催。北京市内の主要商業エリアとも連動し、展示会の経済効果を市内全体へ波及させる取り組みも進めている。
北京市の唐文弘副市長は、今年のCIFTISではサービス貿易とサービス消費、サービス貿易とサービス投資の連動をさらに重視し、「展示会にとどまらず、無限に波及させる」ことを目指すと述べた。
中国のサービス貿易は、同国の対外貿易における重要な成長分野となっている。2026年上半期の中国のサービス輸出入総額は3兆8000億元(約76兆円)に達し、前年同期比8.3%増加した。うちサービス輸出は17.6%増と大きく伸び、対外貿易の新たな成長エンジンとなっている。
中国商務部研究院の李俊・国際サービス貿易研究所長は、サービス消費とサービス貿易は、経済成長を支え、国内外の循環を円滑にし、競争力を高める重要な柱になっていると指摘。中国は「サービス貿易大国」から「サービス貿易強国」への転換を進めているとの認識を示した。
今回初めて設置されたのが、企業の海外進出を支援する「海外進出サービス推進・ロードショーエリア」だ。金融、法律、会計、知的財産権などの専門機関が集まり、40以上のプロモーションや商談イベントが予定されている。
企業の海外展開をめぐっては、単に価格競争力を高めるだけでは不十分になっている。KPMG中国の李瑶氏は、企業には各国のルールへの適応力、コンプライアンス管理能力、リスク対応力など、総合的な競争力が求められていると指摘した。
「中国企業が海外へ進出する」だけでなく、「中国のサービスも海外へ付いていく」という流れが強まっている。その一例が、8月25日に打ち上げられた中国製衛星だ。中国の長征六号丙ロケットがタイ向け衛星を軌道へ投入し、農業や生態環境などのリモートセンシングデータサービスを提供する。中国の民間宇宙企業が東南アジアの国に対して、衛星の開発、打ち上げ、軌道上での引き渡しまで一貫して行った初めてのケースとなった。
CIFTISが示しているのは、製品やサービスそのものだけではない。中国が進める制度型の対外開放も重要なテーマとなっている。例えば、厦門港からシンガポール港へ食品缶詰を輸送する場合、かつては船荷証券(B/L)を国際宅配便で両国間に送る必要があった。
現在は「信貿鏈(Trade Trust)」を活用することで、同じ船荷証券の処理にかかる時間を約8分に短縮。船会社、荷主、銀行の間で電子船荷証券を異なるブロックチェーン間で流通させ、デジタル化された代金回収を可能にしている。
北京市の「両区」政策を担当する部門とシンガポール側の関係機関が共同で進めるこの仕組みは、対象品目をさらに拡大している。
サービス貿易では、モノそのものではなく、データ、知識、設計、研究開発、金融、法律、知的財産といった「目に見えない価値」が国境を越える。
2026年上半期、中国の知的財産権使用料輸出は前年同期比44.3%増加した。研究開発やデザインといった「見えない能力」が、サービスとして国際取引されるケースも増えている。
中国各地でもサービス貿易の開放・高度化に向けた取り組みが進む。北京では、データ越境移転のネガティブリストの適用範囲を自由貿易試験区から市全域へ拡大し、医療機器、貿易・物流など9分野を対象としている。上海では航空機の国際サービスチェーンの整備、広州では金融・渉外法律サービスの革新、成都ではデジタル文化コンテンツの輸出クラスター育成など、地域ごとに特色あるサービス産業の形成を目指している。
デロイト中国の王拓軒氏は、CIFTISは単に「サービスを売る」展示会ではなく、政策を実際の産業現場へ落とし込み、中国のサービス標準の海外展開を促す場になっていると評価する。

中国のサービス貿易は、経済の構造変化を映す鏡でもある。これまで世界市場で存在感を高めてきた「中国製造」に加え、AI、デジタル技術、物流、金融、文化、医療、宇宙など、より高度な「中国サービス」が海外市場へ進出し始めている。
世界経済の成長力が鈍化するなか、中国は高水準の対外開放を進め、サービス貿易を新たな国際協力の接点にしようとしている。
首鋼園の高炉はかつて中国の工業化を象徴する存在だった。その場所で現在、AIやデジタル技術、金融、文化、グリーン技術などを軸とする新たな「サービス」の国際交流が進んでいる。
2026年のCIFTISは、中国が「モノを世界へ届ける国」から、「技術、サービス、ルール、知恵を世界と共有する国」へと変化しつつある姿を映し出している。
「中国製造」から「中国サービス」へ――。商品の移動だけでなく、サービスとルール、データ、知識の国境を越えた交流が加速するなか、中国は開放を通じて世界との新たな接点を広げようとしている。
(中国経済新聞)
