中国の新興EVメーカー、零跑汽車(Leapmotor)が急速に販売規模を拡大している。2026年上期(1~6月)の売上高は前年同期比57.2%増の381億1000万元(約9069億円)、世界での完成車納車台数は60.8%増の35万6487台に達した。親会社株主に帰属する純利益は2億1000万元(約50億円)となり、半期ベースでの黒字を維持した。
特に目を引くのが海外事業の急成長だ。上期の輸出台数は9万6294台と前年同期比372.6%増。2025年通年の輸出台数をすでに上回り、総販売台数の27%を占めるまでになった。
中国国内のEV市場では価格競争が激化している。零跑汽車は海外市場を新たな成長エンジンと位置付け、販売網の拡大だけでなく現地生産にも乗り出している。
零跑汽車の2026年上期売上高は381億1000万元(約9069億円)で、前年同期から57.2%増加した。世界での完成車納車台数は35万6487台となり、前年同期比60.8%増。大幅な販売増加によって、売上規模は一気に拡大した。
売上高の約93%にあたる356億元(約8473億円)は自動車・部品事業によるもの。サービスなどの売上高は25億1000万元(約597億円)で、前年同期比118.3%増と急伸した。サービス収入の拡大には、海外事業の成長に加え、カーボンクレジット取引収入の増加も寄与した。
一方、販売台数の急増がそのまま利益の大幅な増加につながっているわけではない。上期の総合粗利益率は11.7%。前年同期の14.1%から低下した。会社側は、主な要因として原材料価格の上昇と、低価格帯の「Aシリーズ」車種の販売増加による商品構成の変化を挙げている。
また、上期の純利益は2億1000万元(約50億円)だったものの、株式報酬費用が前年同期の3億元から6000万元(約14億円)に減少したことが利益を押し上げた。 株式報酬の影響を除いた調整後純利益は2億7000万元(約64億円)で、前年同期の3億3000万元(約79億円)から減少している。つまり、「販売は急拡大しているが、利益の質にはなお改善余地がある」というのが今回の決算のポイントだ。
もっとも、急速な販売拡大によってコスト効率は改善している。上期の販売費は前年同期比41.1%増、管理費は27.8%増、研究開発費は22.8%増だった。いずれも売上高の57.2%増を下回っており、販売台数の増加によって固定費をより多くの車両に分散できる「規模の経済」が働き始めている。四半期ベースではその傾向がより明確だ。2026年第2四半期の粗利益率は12.6%と、第1四半期から3.2ポイント改善した。
今後、販売台数の拡大とともに粗利益率をどこまで引き上げられるかが、零跑汽車の企業価値を左右する重要なポイントになりそうだ。
今回の決算で最も注目されるのが海外事業だ。上期の輸出台数は9万6294台で、前年同期比372.6%増。実に約4.7倍となった。
上期に新たに増えた13万4800台の販売台数のうち、半分以上を海外市場が占めたとされ、海外事業が販売拡大の中心的な役割を担っている。
中国国内ではEVメーカー同士の価格競争が激しくなる一方、零跑汽車は欧州を含む海外市場を積極的に開拓することで、新たな需要を取り込んでいる。
現在、同社の事業は45カ国・地域以上に広がり、海外の販売・アフターサービス拠点は1000カ所を超えた。
輸出だけではない マレーシア・スペインで現地生産へ。零跑汽車の海外戦略は、単純な完成車輸出にとどまらない。マレーシア工場では「C10」の量産を開始。スペイン工場では「B10」の生産を第3四半期に開始する計画だ。現地生産を進めることで、関税や物流コストを抑え、海外事業の収益性を改善する狙いがある。
中国EVメーカーの海外進出では、単純な輸出から現地生産、販売網、アフターサービスまで含めた「現地化」への移行が進んでいる。零跑汽車もその流れに乗り、海外市場を長期的な収益源へ育てようとしている。
国内市場では商品ラインアップの拡充も進めている。A、C、Dの3シリーズを軸に、幅広い価格帯をカバー。「A10」は10万元(約238万円)以下の市場を狙う一方、「D19」は月間販売台数1万台規模に到達。「D99」では30万元(約714万円)を超える高価格帯への進出を目指している。低価格モデルで販売台数を伸ばしながら、高価格モデルで利益率を改善するという二段構えの戦略だ。
さらに、中国一汽との提携も拡大しており、完成車、インテリジェント運転、バッテリーなど10分野で協力する。共同開発車の量産も近づいている。
零跑汽車は2026年7月、月間納車台数が10万台を突破した。これは中国の新興EVメーカーにとって大きな節目だ。同社は年間100万台の販売目標を掲げており、下期にはこのペースをどこまで維持できるかが焦点となる。
ただし、販売台数だけを追えばいいわけではない。低価格車の販売拡大は販売規模を押し上げる一方、粗利益率を圧迫する可能性がある。高価格帯のDシリーズが利益改善に貢献できるか、そして海外事業が「販売台数は多いが利益が少ない」状態から脱却できるかが重要になる。
零跑汽車の2026年上期決算は、中国新興EVメーカーの現在地を象徴する内容となった。売上高は約9070億円、半年間の販売台数は35万台超、海外輸出は前年比約4.7倍。規模という点では、急速に大手メーカーの領域へ近づいている。一方で、粗利益率の低下やキャッシュフローへの負担、海外工場・販売網への投資など、急成長の裏側には課題も残る。
同社の上期の営業活動によるキャッシュフローは21億7000万元(約516億円)で、前年同期の28億6000万元(約681億円)から減少。フリーキャッシュフローも1億4000万元(約33億円)まで低下した。
会社側は、国内外の需要に対応するため事前に在庫を積み増し、仕入れ支出が増えたことが主因としている。6月末時点の各種資金残高は385億9000万元(約9184億円)と、手元資金にはなお余裕がある。
一方、原材料価格の影響を受け、2026年通期の純利益見通しは約30億元(約714億円)に下方修正。通期の総合粗利益率は13~14%を想定している。
「月10万台」を達成した零跑汽車にとって、次の勝負は販売台数ではなく、増えた台数をどれだけ利益に変えられるかだ。 海外市場の拡大、高価格モデルの販売、現地生産によるコスト削減――この3つを同時に進められるか。年間100万台を目指す零跑汽車が「急成長するEVメーカー」から「安定して利益を生み出すグローバル自動車メーカー」へ進化できるかが、2026年後半の最大の焦点となる。
(中国経済新聞)
