中国の工業企業の収益改善が続いている。中国国家統計局が発表したデータによると、2026年1~7月の一定規模以上の工業企業の利益は前年同期比17.6%増加した。7月単月でも利益は前年同月比11.2%増となり、工業企業の収益は堅調な回復基調を維持している。
背景には、工業生産の安定した伸びに加え、人工知能(AI)関連需要の拡大や高付加価値製造業の成長がある。一方、自動車や鉄鋼、非金属鉱物製品など一部の伝統産業では利益が大幅に減少しており、業種間の格差は一段と鮮明になっている。
1~7月の一定規模以上の工業企業の営業収入は前年同期比6.5%増加した。これに伴い、利益も17.6%増となった。
企業の収益性を示す指標にも改善がみられる。営業収入100元当たりのコストは85.00元と、前年同期から0.47元低下した。今年に入ってから単位コストは前年同月比で低下する傾向が続いている。
また、営業収入利益率は5.66%と前年同期から0.54ポイント上昇し、2023年以降の同時期として最高水準となった。
中国首席エコノミストフォーラムのメンバー、龐溟氏は、減税・費用削減や融資保証などの企業支援策が企業の負担軽減に効果を発揮していると指摘。工業生産の安定とマクロ政策の効果が重なることで、企業の粗利益率や総合的なコスト管理能力が改善し、利益の基盤が強化されているとの見方を示した。

業種別では、鉱業の利益が前年同期比34.9%増、製造業が18.8%増となった。一方、電力・熱供給・ガス・水の生産・供給業は5.8%減少した。
なかでも目立つのが電子産業だ。AIの実用化が急速に進み、データ処理や計算能力への需要が拡大するなか、関連製品の需要増加と価格上昇が企業利益を押し上げた。
電子産業の1~7月の利益は前年同期比1.1倍増加し、工業企業全体の利益増加に9.3ポイント寄与した。全体の利益成長を支える主要分野となっている。
その中核を担ったのが集積回路(IC)産業だ。演算能力向けチップやメモリーチップなどを中心に、集積回路産業の利益は前年同期比18.5倍に急増した。電子産業全体の利益増加への寄与率は8割を超えた。
AI関連需要の波及はコンピューター関連産業にも及んでいる。コンピューター完成機、コンピューター周辺機器、産業用制御コンピューター・システムの製造業では、利益がそれぞれ3.3倍、2.5倍、1.6倍に増加した。
さらに、電子専用材料、半導体ディスクリートデバイス、電子回路の製造業でも、利益はそれぞれ226.8%、45.8%、37.1%増加した。
龐氏は、電子産業の高成長について、新質生産力の加速的な発展と、世界的なAI・コンシューマーエレクトロニクス産業のサイクルが重なった結果だと分析する。特にメモリーチップなど集積回路を含む高付加価値分野で、需要拡大による利益の急増が顕在化している。
AI、ビッグデータ、クラウドコンピューティングの普及によって電子情報産業の市場規模が拡大し、上流部品や関連製造分野にも成長が波及している。輸出受注の回復や国内サプライチェーンの整備も、企業収益を支える要因となっている。
製造業の高度化が進むなか、高技術製造業の利益も大きく伸びた。1~7月の高技術製造業の利益は前年同期比50.1%増加し、工業企業全体の利益成長を9.6ポイント押し上げた。
通信関連では、光ファイバー製造の利益が468.4%増、光ケーブル製造が62.6%増、通信システム設備製造が55.0%増となった。
原材料製造業も好調で、利益は前年同期比55.2%増加し、工業企業全体の利益成長に7.1ポイント寄与した。有色金属産業は91.8%増、化学産業は56.6%増と大幅に伸びた。
石油加工産業も赤字から黒字へ転換し、1~7月の利益総額は422.1億元となった。
こうした動きは、中国の工業利益が単純に一様に回復しているのではなく、AIや通信などの新興分野、高技術製造業、原材料産業に成長が集中していることを示している。
一方、すべての業種が恩恵を受けているわけではない。
1~7月の自動車製造業の利益は前年同期比20.4%減少した。鉄鋼にあたる黒色金属精錬業は51.2%減、非金属鉱物製品製造業は48.2%減と、大幅な落ち込みとなった。電力・熱供給関連の利益も8%減少した。
これらの業種では、需要不足、製品価格の低下、過剰生産能力などが収益を圧迫している。特に伝統産業の低迷は、工業企業全体の利益回復における「業種間格差」という課題を浮き彫りにしている。
龐氏は、伝統産業について、需要不足や価格下落、過剰生産能力が利益を抑制し、工業利益全体の均衡的な回復を妨げていると分析した。電力・熱供給業の利益減少についても、エネルギーコストと需要構造のミスマッチが表れていると指摘している。
中国国家統計局工業司の于衛寧・首席統計師は、各地域・各部門がより積極的なマクロ政策を実施し、高品質発展を着実に推進するなか、工業生産は安定して伸び、新たな成長エンジンも急速に成長していると評価した。
ただし、国際情勢は依然として複雑で厳しく、中国国内では「供給が強く、需要が弱い」という構造的な矛盾が残っている。
今後は、内需をさらに拡大するとともに、供給構造を改善し、伝統産業の高度化、新興産業の育成、未来産業の開発を同時に進めることが重要になる。新旧の成長エンジンを円滑に切り替え、工業経済の持続的な高品質成長につなげられるかが焦点となる。
1~7月の工業利益の伸びは、AI・半導体を中心とする新たな成長分野の勢いを鮮明に示した。一方で、伝統産業の収益悪化も続いている。中国の工業経済は全体として回復しているものの、その実態は「新興分野がけん引し、伝統産業が重荷を抱える」という二極化した構図になっている。
(中国経済新聞)
