中国自動車大手、吉利汽車控股は8月17日、創業者である李書福氏が取締役会主席(董事長)および執行董事を辞任し、後任に吉利控股集団の最高経営責任者(CEO)である安聡慧氏が就任すると正式に発表した。李氏は引き続き吉利汽車の支配株主であり、吉利控股集団の董事長を務める方針を維持。同日時点で保有株式の減持計画はなく、「今後も吉利汽車の発展を全力で支援する」と強調した。
今回の人事は単なるトップ交代にとどまらない。李東輝氏が副董事長を退任して執行董事に留まり、元行政総裁の桂生悦氏が新たに副董事長に就任。さらに吉利汽車集団のCEOだった淦家閲氏が行政総裁の職を引き継いだ。一連の調整は、吉利汽車が「創業者主導」から「制度とプロフェッショナルチーム主導」への転換を明確に示す動きだ。
李氏は同日のビデオメッセージで「自動車産業は終わりのないマラソンだ。企業の継承と価値観のあり方が、持続的な発展能力を決定づける。今回の経営陣調整は、職業化されたチームを構築するためだ」と述べた。桂生悦氏も「これは吉利汽車の『脱家族化』宣言だ」と位置づけ、国内民営企業が数十年の発展を経て直面する「継承問題」に正面から向き合った結果だと説明した。創業者個人のカリスマや権威に依存する段階から、組織システムと人材の厚みに支えられる成熟期へと移行したことを意味し、企業統治の透明性向上、意思決定の専門性、管理の科学性を高める効果があると指摘している。社内人材にとっても「天井」を打ち破る信号となり、従業員全体の意欲を刺激するとも語った。
李氏の子女の関与状況も、家族色の希薄化を裏づける。息子の李星星氏は過去に吉利汽車傘下の複数企業で勤務した経歴があるが、現在の公的な役職は吉利控股集団の監事のみ。一方で電池・部品企業の浙江耀寧科技集団の法定代表人、董事、支配株主を兼ねている。娘の李妮氏は吉利控股と耀寧科技でわずかな株式を保有するにとどまり、吉利汽車上場会社の業務には一切関与していない。
同日発表された2026年上半期決算は、厳しい国内市場環境の中で輸出が業績を下支えしたことを示した。販売台数は143万台で前年同期比1%増。売上高は1736億元(約3兆5000億円超)と15%増加した一方、純利益は90・9億元で1・8%の微減となった。ただし為替差損や非金融資産の減損などを除いたコア純利益は前年同期比46%増の96・8億元に達し、粗利率は17・9%へと上昇した。1台当たり売上も16%増の11・2万元となり、ブランド統合の効果が現れ始めている。
国内乗用車市場は卸売台数が24・3%減の829万台と大幅に落ち込んだ。特にガソリン車とハイブリッド車は31・9%減、新エネルギー車も16・8%減と厳しい状況が続いた。対照的に輸出は中国全体で71・7%増の443万台と急拡大し、卸売全体に占める割合が34・8%に達した。吉利汽車はこの波に乗り、輸出台数を158%増の47・4万台まで伸ばした。すでに年間64万台の輸出目標を達成したとして、淦家閲氏は通期目標を92万台に上方修正し、100万台への挑戦も視野に入れると宣言した。地域別ではASEANが30万台、東欧・西欧・中南米・アフリカが各20万台、中東・アジア太平洋が10万台という内訳を想定している。中長期的には海外販売を200万台規模まで拡大し、最終的に販売の3分の2を海外に求める方針だ。
海外生産体制の強化も加速する。安聡慧氏は、ボルボ・カーの欧州工場で吉利の高級ブランド車を現地生産する計画を明らかにし、2028年の稼働を目指すと述べた。マレーシアのプロトン工場を東南アジア向けの製造拠点として拡充する作業も2028年までに完了させる。さらに2026年7月には、フォードのスペイン・バレンシア工場の34%株式を2・21億ユーロで取得。同工場の年間生産能力は50万台に達し、主に銀河ブランドの新エネルギー車を生産する予定だ。
吉利汽車は2024年9月に「一つの吉利」戦略を掲げ、複数ブランドの統合と米上場の「極氪」の私有化を進めてきた。2026年上半期には新エネルギーピックアップに特化したレーダー汽車も完全子会社化した。今回のトップ人事は、そうした事業再編と軌を一にする「組織の成熟化」の象徴と言える。国内市場の低迷が続く中、輸出と海外現地生産を両輪に、持続可能な成長モデルへの転換を図る吉利汽車の行方に、業界の注目が集まっている。
