2026年夏、ヨーロッパ全土が記録的な猛暑に見舞われている。まるで「灼熱地獄」のような日々が続き、人々が毎日汗だくで過ごす羽目になっている。ドイツ東部では41・5℃という衝撃的な最高気温を記録し、歴史を塗り替える事態になった。イギリスやフランスでも過去最高の気温が幾度も塗り替えられ、熱中症アラートが頻発している。街中では「熱中症に注意!」との呼びかけが伝わり、日常生活ががらりと変わってしまった。
そんな中で、意外なヒーローが登場した。中国製のエアコンだ。エアコンの普及率が低く古い建物の多いヨーロッパで、中国ブランドの製品が大ブレイクを果たした。店頭では移動式エアコンから最新の革新的なポータブル式エアコンまで飛ぶように売れ、「一台も在庫がない」「予約待ちが数週間」といった状況があちこちで起きている。この現象は単なる季節的な需要増ではなく、気候変動がもたらした非常事態と、中国製造業の底力を見せつける出来事として、世界の注目を集めている。
ヨーロッパが「灼熱モード」に完全突入、中国製エアコンの需要が爆発的に増加
ヨーロッパは今年、6月下旬から容赦ない熱波にさらされ続けている。ドイツの気象当局によると、ザクセン・アンハルト州では41・5℃を観測した。過去の最高記録を大幅に更新する異常事態だ。暑さのために高速道路の路面が損傷し、交通規制が相次いだ。イギリスでは3日連続で過去の最高気温が塗り替えられて37・3℃に達し、数千校の学校が休校や授業の短縮を余儀なくされた。さらにフランス西部では、6月としては記録的な43℃まで気温が上昇し、市民生活に重大な影響が出ている。

ヨーロッパでは長年、エアコンは「贅沢品」として扱われている。主な理由は三つある。一つ目は、歴史的建造物を保護する厳しい法律が多く、壁に穴を開けてエアコンを設置するのが困難であること。二つ目は、設置費用が非常に高額で通常1000~2000ユーロ(約15万~30万円)もかかること。そして三つ目は、昔からの環境意識の高さと、比較的穏やかな気候で「冷房など必要ない」という考えが根強いことだ。しかし、今年の異常な猛暑でこうした常識が一気に崩れた。家庭での冷房需要が爆発的に高まり、中国企業が素早くこのチャンスを掴んだ。
特に人気なのは、移動式エアコンと、中国企業が独自に開発した「イノベーティブな混合型製品」だ。統計によると、ヨーロッパ市場全体における中国製エアコンのシェアについて、2023年には27%だったが2026年上半期には41%へと大幅に上昇した。中国の主要メーカーであるMidea(美的)、ハイアール(海爾)、グリー(格力)、TCL、ハイセンス(海信)などがこの動きをリードし、現地で圧倒的な存在感を示している。これら各社の製品は単に安いだけでなく、ヨーロッパの生活スタイルに合わせて工夫を凝らした形として消費者の心を掴んでいる。

商品イノベーションがヨーロッパ消費者の問題点に的確に対応
中国のエアコンがここまで強力に支持されている理由は、「現地消費者目線の製品開発」にある。中国機電産品進出口商会家電分会の周南秘書長は、「今回の成功は偶然ではなく、中国企業が長年ヨーロッパ市場に深く根を張り、消費者の本当のニーズを研究し続けた結果だ」と語っている。
従来のエアコンは主に窓型、分離型、移動型の三種類に分けられる。ヨーロッパでは以前、扇風機やシンプルな移動型エアコンに頼ることが多かったのだが、移動型エアコンは「冷房効果が今一つ」「排気用のダクトを窓から出すのが面倒」「操作音が大きい」といった不満が付きまとった。一方分離型エアコンは、冷気は強いが専門業者による設置工事が必要で、古い建物では許可が下りなかったり、費用がかさんだりした。
ここで中国企業が打ち出したのが、ポータブル式の分離型エアコンだ。例えばMideaの「PortaSplit」シリーズは、まさに両者の利点を融合させた画期的な製品だ。室内機はキャスター付きで自由に移動でき、室外機は利用者自身で簡単に設置ができる。壁に大きな穴を開ける必要もなく、賃貸住宅や歴史的建造物でも使いやすい設計になっている。こうした工夫により冷房の快適さが大幅に向上し、高額な設置費用も節約できる。まさにヨーロッパの人々が抱えていた「最大の問題点」をピンポイントで解決したわけだ。
美的のPortaSplitは事実、ドイツを中心とした西ヨーロッパで深刻な品薄状態となっている。売り上げ台数は半年間で6万台以上、全商品カテゴリーの売上が前年比70%以上プラスという結果の原動力となった。ハイセンスはフランスで売上高が2倍以上となり、設置が簡単で取り外し可能な分離型エアコンが特に好評だ。TCLはECプラットフォームに注力し、AIを活用して省エネ機能を強化した移動式・インバータ分離式エアコンで、注文が90%増えた。グリーはサイレント技術とエンジニアリング向け販路を活かし、フランスでの末端販売数を50%伸ばし、従来の分離型機種はすでに8月末まで注文が埋まっている。ハイアールは現地での運営強化と現地企業の買収により、充実した販売・サービスネットワークを構築し、ヨーロッパ全体でユニット事業が20%以上の成長を果たしている。
これらの製品は、EUの省エネ規格で特に厳しい「A+++」や、冷媒の環境対応規格をしっかりクリアしている。費用対効果について「中国製=低品質の受託品」という旧来のイメージを完全に覆し、ヨーロッパの消費者から「信頼できる選択肢」として認められるようになった。
強靭なサプライチェーンが爆発的な需要を支える
優れた製品の裏側には、中国独自の完全な産業チェーンと、迅速なサプライチェーン管理がある。中国は世界のエアコン生産量の80%以上を占め、主力部位であるコンプレッサーの生産量も90%近くに達している。こうした優位性は他国には真似できないレベルだ。さらに重要なのが「スピード」である。中国企業は注文を受けてから製品を届けるまでの日数をおおむね2~3週間に短縮した。緊急時には10日程度で納入できる柔軟な体制を整えている。
突如の襲来となった今年のヨーロッパの猛暑。このような強力なサプライチェーンがなければ、到底需要に対応できなかっただろう。中国―ヨーロッパ間の貨物列車をはじめとする効率的な輸送ルートも大きく貢献し、企業が素早く在庫を補充してマーケットを逃さなかった。
中国国際経済交流センター欧米研究部の張茉楠副部長は、「今回の中国製エアコンの人気ぶりは、製造業の強い回復力と完成度の高い産業チェーンの優位性を象徴している。異常気象の発生に際し、EUのニーズに迅速に適応できる点が、中国製造業の独自の競争力だ」と分析している。
単発のヒット商品を超えて
中国はすでに世界最大の製造業大国で、世界の生産額の30%以上を占めている。しかし、国際規格の制定やルール形成といった面では、まだEUに学ばなければならない点が多く残されている。EUは「ブリュッセル効果」と呼ばれる影響力で、デジタル化や環境基準といった分野で世界をリードしてきた。
中国の製造業は今後、二つの方向で進化する必要がある。一つは技術革新による高付加価値化で、もう一つはルール形成への積極的な参画だ。競争の優位性を「ルールの優位性」へ変えていくことで、グローバルで持続的なリーダーシップを確立できる。
ヨーロッパでの中国製エアコン爆売れは、「偶然の産物」ではない。長年にわたる市場調査、技術の蓄積、生産体制の強化が結実したものだ。中国製造業は、敏感な市場の嗅覚と迅速な実行力で、「必要とされているものをきちんと理解して作る」という姿勢を体現している。特定のブームや単一の商品に留まらず、常に世界市場の最前線を航海する船として前進を続けるだろう。
猛暑に苦しむヨーロッパで中国製エアコンが広く受け入れられたのは、中国製造業の競争力を象徴する実例である。これはヨーロッパでの暑さ対策に直接貢献しただけでなく、経済協力においても市場主導の前向きなエネルギーを注ぐものとなった。
(中国経済新聞)
