7月に入り、欧州各地を襲う記録的な猛暑は、家庭用エアコンの品薄という消費市場の話題にとどまらず、生産、物流、エネルギー、人材などサプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼしている。こうした中、中国企業は単なる空調機器の輸出から一歩進み、産業向けの総合温度管理ソリューションを提供することで、欧州市場で存在感を高めている。
ドイツのテクノロジー企業のグローバルCEOは、中国メディア「第一財経」の取材に対し、高温による経済損失は数十億ユーロ規模に達していると説明した。猛暑による体調不良で労働力不足が深刻化したほか、高温で設備が正常稼働できなくなり、部品や完成品の出荷も滞るなど、多方面で生産活動に支障が生じているという。
別の多国籍企業の責任者は、フランスでは在宅勤務を認める一方で、従業員は空調設備の整ったオフィスへの出勤を希望するケースが増えていると明かした。欧州では住宅用エアコンの設置費用が高額なうえ、歴史的建造物保護などの規制により室外機の設置が困難な住宅も多い。また、一部地域では変電所が高温で停止し、電力網の過負荷による計画停電も発生しており、産業活動への影響が広がっている。
化学産業でも冷却水不足が大きな課題となっている。猛暑で河川の水温上昇や水位低下が進み、多くの工場が減産や操業停止を余儀なくされている。世界最大級の化学メーカーであるBASFは、ドイツ・ルートヴィヒスハーフェンの主力拠点で、ライン川の水位低下により冷却水の確保が難しくなり、生産調整やポリウレタン原料TDIの製造停止に追い込まれた。
物流分野でも影響は深刻だ。道路ではアスファルトの軟化や車両故障が増加し、ライン川など主要内陸水路では水位低下によって船舶の積載量が制限され、輸送コストが急騰している。さらに、高温による屋外作業時間の短縮や工場での熱中症対策に伴う操業停止により、生産性や労働力確保にも悪影響が及んでいる。
これらの問題は相互に連鎖し、労働力不足が物流を圧迫し、部品供給の遅延が工場の減産を招き、生産コストを押し上げるという負の循環を生み出している。
こうしたサプライチェーン全体への打撃は、欧州経済にも大きな代償をもたらすとみられる。保険会社アリアンツ・トレードは6月公表の報告書で、2026年から2030年にかけて猛暑が続けば、フランス、イタリア、ドイツ、スペインなど主要国ではGDPが5~7%押し下げられ、損失額は6,380億ドルに達する可能性があると試算している。
このような状況を受け、中国企業は欧州向け事業を「製品販売」から「システム提案」へと進化させている。
美的集団(Midea)のビル設備部門関係者は、「欧州の猛暑は家庭用空調需要だけでなく、工場や商業施設、物流拠点における産業用温度管理ニーズも大きく押し上げている」と説明する。同社は欧州でホテルやオフィス、商業施設向けの空調・暖房・給湯を一体化したHVACシステムを提供するとともに、工場や物流センター向けには、生産設備の停止防止や倉庫内温度管理を目的とした産業用温度管理ソリューションを展開している。
一方、エネルギー分野でも協力は拡大している。6月下旬に開催されたドイツ・ミュンヘンのスマートエネルギー展示会では、中国と欧州企業の間で太陽光発電モジュール2.65GW超、蓄電設備87.74GWhに及ぶ契約が成立した。また、トリナ・ソーラーの蓄電事業会社と欧州機関が共同で設立した総額10億ユーロの「EU蓄電基金」も実施段階に入っている。EUは6月26日に「蓄電三者協定」を締結し、今後3年間で45GWhの蓄電設備を新設する目標を掲げた。
専門家は、中国の太陽光・蓄電設備はもはや単なる輸出製品ではなく、欧州のエネルギーインフラを支える重要な構成要素になっていると指摘する。気候変動がもたらす新たな需要は、中欧の関係を従来の商品貿易から、エネルギー・産業基盤を共同で構築するパートナーシップへと発展させつつあるという。
今年5月末には、中国の厦門タングステン新能源(XTC New Energy)とフランスのオラノ・グループが、フランス・ダンケルク港で車載電池用正極材工場の建設を開始した。総投資額は約5億ユーロで、年間4万トンの生産能力を持ち、約50万台分のEV向け電池材料を供給する計画だ。市場拡大に応じ、将来的には年間8万トンまで増産する構想も示されている。
また、建材分野では、中国企業が断熱材など建築資材の供給を強化し、物流分野では菜鳥(Cainiao)が欧州28カ所の海外倉庫を開放して保管能力を拡充、京東物流(JD Logistics)は欧州で空調配送スタッフを増員した。京東傘下のJoybuyは、猛暑を見越して移動式エアコンや扇風機の在庫を各国倉庫へ前倒し配備し、最短翌日配送を実現している。
B2B越境EC「阿里国際站(Alibaba.com)」によると、7月初旬にはスウェーデン市場で扇風機の受注が前年同期比375%増となるなど、北欧でも冷房需要が急拡大している。
欧州を襲う猛暑は、サプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにすると同時に、中国企業にとっては製品輸出を超えた「ソリューション輸出」と産業協力を加速させる新たな契機となっている。
(中国経済新聞)
