中国、28省で出産費用「自己負担ゼロ」へ 少子化対策を加速

2026/07/10 17:30

中国では少子化対策の一環として、生育支援制度の拡充が急速に進んでいる。国家医療保障局は、2026年までに医療保険の適用範囲内における入院出産費用の自己負担を原則ゼロとする方針を掲げていたが、現在までに全国28省・278の統括医療保険地域で、この目標がほぼ実現したと発表した。

対象となるのは、医療保険加入者の女性労働者が出産時に発生する医療費のうち、医療保険の給付対象となる費用で、指定医療機関での診療など所定の条件を満たせば全額が保障される。さらに江蘇省、福建省、寧夏回族自治区など9省・自治区では、都市・農村住民向け医療保険加入者にも制度を拡大し、より幅広い世帯が恩恵を受けられるようになった。

国家医療保障局の劉娟・待遇保障司副司長は9日の記者会見で、「妊娠しやすく、安心して出産し、子育てしやすい環境を整えることが重要だ」と述べ、生育支援を妊娠前から出産、育児まで一貫して支える制度づくりを進めていると説明した。

不妊治療支援も大きく前進している。2025年には、全国すべての省・自治区・直轄市で、適切な生殖補助医療(ART)を医療保険の給付対象に組み込み、約10か月で制度整備を完了した。これにより、年間160万人以上の加入者が恩恵を受けたという。

妊娠期間中の支援では、各地で妊婦健診費用の補助額が引き上げられている。2026年からは北京市、寧夏回族自治区、福建省福州市などで補助額が増額されたほか、雲南省では7月10日から住民医療保険加入者の妊婦健診費補助を年間1,000元へ引き上げる。

出産時の負担軽減策も充実している。入院出産費用の自己負担実質ゼロに加え、全国30省と新疆生産建設兵団では無痛分娩(分娩鎮痛)が医療保険の対象となり、経済的・身体的負担の軽減が進んでいる。

育児支援では、2025年末時点で生育保険加入者は2億6,000万人に達し、生育手当の受給者は約481万人となった。女性労働者1人当たりの平均支給額は約3万元(約62万円)に上り、有給産休期間中の所得を支える制度として定着している。現在では全国で生育手当が本人へ直接支給され、29省では省内であれば医療保険地域をまたいでも出産医療費を直接精算できる体制が整った。

さらに、新生児向けには「出生ワンストップ手続き」の導入が進み、出生届と同時に医療保険へ加入できる仕組みが普及している。江西省や湖南省などでは、新生児の住民医療保険料を免除する制度も導入され、「生まれたその日から医療保障を受けられる」環境が整いつつある。

また、生育保険の対象拡大も進んでいる。現在、全国20省・156地域で、フリーランスや農民工(出稼ぎ労働者)、ギグワーカーなど新しい就業形態の労働者も職工医療保険と生育保険へ同時加入できるよう制度を見直しており、出産医療費の補償や産休手当を受けられる対象者が広がっている。

中国政府は、医療費負担の軽減にとどまらず、不妊治療、妊婦健診、出産、育児までを包括的に支援する制度を整備することで、少子化対策と子育てしやすい社会の実現を目指している。

(中国経済新聞)