中国の名門大学で本科定員拡大 AI・半導体など戦略分野の人材育成を加速

2026/06/7 16:31

中国の多くの大学が2026年度の学部(本科)募集定員の拡大を発表している。政府が掲げる「優質本科教育の拡充(優本拡容)」政策を背景に、国家戦略上重要な先端分野や学際領域の人材育成を強化する狙いだ。

中国政府は2026年の政府活動報告で、質の高い本科教育の定員を引き続き拡大する方針を明確にした。また、「第15次五カ年計画(十五五)」では、高等教育の質的向上と規模拡大を推進し、「双一流」大学の新キャンパス整備や、本科定員を10万人以上増やす目標を掲げている。

こうした方針を受け、多くの「双一流」大学が2026年度の増員計画を打ち出した。

南京大学は本科生定員を300人増やすと発表した。同大学では2021年以降の増員数が累計1000人を超えており、重点分野として国家が必要とする先端学際領域に力を入れる。蘇州キャンパスでは新工学(ニューエンジニアリング)教育を強化しており、2026年には未来技術学院が本科生募集を開始する。産学研連携による実践的な教育を通じて、次世代の高度技術人材育成を目指す。

このほか、蘭州大学は300人、西安電子科技大学は400人、西安交通大学は360人の増員を予定している。東南大学は募集定員を前年の4225人から4825人へと600人増やし、今回の拡大幅では主要大学の中でも最大規模となる。江南大学も210人の増員を決め、本科募集規模は過去最高となる見通しだ。

また、北京科技大学は90人の増員を発表し、中国石油大学は120人増、中国農業大学は100人以上の増員を計画している。山東大学も100人増員し、本科生募集総数は1万475人に達する見込みだ。

増員の重点は、人工知能(AI)、集積回路、新材料、エネルギー、蓄電技術、スマート製造、具身知能(Embodied AI)など、中国が戦略的に育成を進める分野に集中している。

一方、「小而精(小規模・高品質)」を特徴とする新型研究型大学でも募集拡大の動きが目立つ。

福耀科技大学は募集定員を前年の50人から100人へ倍増し、新たに山西省、甘粛省、貴州省でも学生を募集する。大湾区大学は初年度の80人から190人へ増員し、募集地域も広東省に加えて広西チワン族自治区、湖南省、湖北省、河南省および香港・マカオへと拡大する。

深圳理工大学も募集地域を前年の8省・自治区から13地域へ広げ、本土学生600人、香港・マカオ学生20人を募集する計画だ。西湖大学も本科生募集人数を初めて200人以上に拡大し、新たに山東省、安徽省、江西省での募集を開始する。

教育専門家の熊丙奇氏は、新型研究型大学の拡大は発展段階として自然な流れだと分析する。その一方で、学生数の増加後も少人数教育やチューター制度、産学連携といった特色ある教育理念を維持できるかが重要な課題になると指摘する。

また、厦門大学経済学系の丁長発副教授は、中国の人口規模や産業発展の需要を考えると、新型研究型大学の数は依然として不足しているとの見方を示した。今後は地方政府や民間企業による大学設立を後押しし、新たな教育資源の供給を通じて大学間の健全な競争を促進すべきだとしている。

中国では現在、少子化が進行する一方で、AIや半導体、新エネルギーなど戦略的新興産業を支える高度人材の育成が急務となっている。今回の大規模な本科定員拡大は、高等教育の量的拡充だけでなく、国家の産業競争力強化を見据えた人材戦略の一環として注目されている。

(中国経済新聞)