春晩に登場した4体のヒューマノイドロボット――その中身を支えるサプライチェーンの実像

2026/02/22 14:30

中国の春節特番「春晩」は、いまやロボット産業にとって“国家級ショーケース”となっている。2026年の舞台には、MagicLab(魔法原子)、Galbot(銀河通用)、Unitree Robotics(宇樹科技)、Songyan Dynamics(松延動力)の4社が登場。それぞれが個性あるパフォーマンスを披露した。

報道によれば、各社は約1億元(約20億円)規模の“出演コスト”を投じたとされる。背景にあるのは、「見られること」への強い渇望だ。IDCのデータでは、2025年の世界ヒューマノイドロボット出荷台数は約1.8万台、前年比508%増。市場は量産フェーズに入りつつある。

だが、照明が落ちた後に残るのは、機体内部の現実である。チップ、減速機、モーター、電池――それらをどう選び、どう束ねるかが、各社の将来を左右する。

1. MagicLab「MagicBot Z1」――国産志向と垂直統合

掃除ロボット企業から独立したMagicLabは、2024年末に1.5億元(約3億円)のエンジェル投資、2025年には数億元(数十億円規模)の戦略投資を調達した。

中核部品の選定において、春晩で披露された「MagicBot Z1」は、計算ユニットの主制御チップに国産SoCメーカーである全志科技を採用している。駆動および制御分野では、MagicLabはパワー半導体メーカーの芯聯集成と提携し、高集積型の電動駆動・制御チップを共同開発している。さらに、芯聯資本も同社の資金調達に参加しており、資本面と技術面の双方で結びつきを形成している。

コスト比率が最も高い伝動・実行部品については、関節部に採用されているハーモニック減速機は国産大手である緑的諧波の製品である。サーボモーターシステムは関節の種類に応じて構成が異なり、業界分析によれば、巧緻手などの小型関節には鳴志電器のコアレスモーターが採用されている可能性があり、胴体の大型関節には匯川技術のサーボシステムが導入されている可能性がある。

感知系および構造部品については、電子皮膚形態の柔軟圧力センサーが漢威科技の子会社である蘇州能斯達から供給されている。

消費電子分野で培ったサプライチェーン管理能力を背景に、核心部品を自社主導で束ねる垂直統合志向が鮮明である。

2. Galbot「Galbot G1」――AI主導のエコシステム型

設立から3年足らずで累計50億元超(約1,000億円超)を調達し、評価額は210億元(約4,200億円)に達したGalbotは、具身知能(エンボディドAI)分野で最も高い評価を受ける企業の一つである。投資家には、美団(Meituan)、寧徳時代(CATL)、中国移動産業チェーン基金、中金資本などが名を連ねる。すでに株式会社化を完了しており、市場では上場準備段階に入ったとの見方も出ている。

Galbotのサプライチェーン戦略は、AI能力の構築を中核に据える点に特徴がある。自社はAIアルゴリズム開発に専念し、ハードウェア、エネルギー、センシングといった領域は、それぞれの分野で実績を持つパートナー企業に委ねている。

中核となる演算ユニットについては、春節特別番組(春晩)で披露された車輪型・双腕ロボット「Galbot G1」に、NVIDIAのAGX Orinチップが搭載されている。64GB版では最大275TOPSの演算性能を発揮し、同社が大規模モデルの高い計算資源に大きく依存していることを示している。

駆動・実行系部品では、業界分析によれば、ハーモニック減速機を緑的諧波(Leaderdrive)が供給しているとみられ、両社が耐久試験ラボを共同設立している可能性もある。駆動制御ユニットおよび関節モーターについては、雷賽智能(Leadshine Technology)や兆威機電(Zhaowei Machinery & Electronics)のソリューションが採用されている可能性が指摘されている。

Galbotのセンシングシステムは、同社の「エコシステム戦略」を象徴する存在だ。複数のAI上場企業の成熟技術を統合しているとみられ、視覚認識には商湯科技(SenseTime)の技術、LiDARは速騰聚創(RoboSense)製品、音声インタラクションには科大訊飛(iFlytek)の技術を導入している可能性がある。

エネルギー分野では、電池大手の寧徳時代(CATL)から戦略投資を受けており、同社がカスタマイズ型の電源ソリューションを提供している可能性もある。

3. Unitree Robotics「Unitree H1」――分散調達と自社開発の併用

Unitree Roboticsは(宇樹科技)は、4社の中で商業化の進展が最も速い企業である。会社の公表によれば、2025年のヒューマノイドロボットの実出荷台数は5,500台を超えた。春節特別番組(春晩)などへの公開出演は、ブランド認知度と製品販売の大幅な向上につながった。2025年7月には新規株式公開(IPO)に向けた上場指導を開始しているが、その後の進展についてはなお不透明な部分も残る。宇樹のサプライチェーン戦略は、多元的な構成を特徴とし、サプライヤーの分散と一部の内製化を組み合わせることで、性能・コスト・供給安定性のバランスを図っている。

計算ユニットの構成は4社の中でも特に柔軟だ。インテル(Intel)のCore i7プロセッサ搭載モデルを用意する一方、AI開発者向けにはNVIDIA(NVIDIA)のJetson Orin NX搭載モデルも提供している。さらに、基盤となるコア制御ユニットには、国産メーカーである全志科技(Allwinner Technology)のチップを採用している。

同社が強みとする駆動・実行系部品では、自社開発の高トルク関節モーターで知られる一方、臥龍電駆(Wolong Electric Drive)などのモーターメーカーとも協業している。特に、四足ロボットBシリーズのモーターは、江特電機(Jiangte Motor)の子会社である米格電機(Mige Electric)が独占供給している点が注目される。減速機については、緑的諧波(Leaderdrive)のハーモニック減速機を調達するほか、業界分析によれば中大力徳(Zhongda Lide)製の遊星減速機の重要顧客でもあるとみられている。

センシング分野では、複数の国産サプライヤーの技術を組み合わせつつ、自社開発能力も維持している。LiDARの供給元には速騰聚創(RoboSense)が含まれるが、同時に自社開発の4D LiDAR「L1」「L2」シリーズも展開している。また、力覚・触覚センサーおよびIMU(慣性計測装置)は漢威科技(Hanwei Electronics)から供給を受け、3次元ビジョンセンサーには奥比中光(Orbbec)の技術を採用している。

エネルギーおよび構造部材の面では、蔚藍鋰芯(Azure Lithium)製の18650円筒型リチウムイオン電池セルを採用し、電池管理システム(BMS)は自社開発としている。さらに、機体外装には金発科技(Kingfa Science & Technology)が提供する軽量改質プラスチックを使用している。

4. Songyan Dynamics「小布米」――極限のコスト統制

松延動力(Songyan Dynamics)は、一般消費者向け市場を主なターゲットとしている。「小布米」ロボットの販売価格は1万元未満で、4社の中で唯一、個人向け製品を展開している企業である。2025年10月には、約3億元のプレシリーズBラウンドの資金調達を完了し、方広資本がリード投資家を務めた。同社のサプライチェーンは、徹底したコスト管理を軸に垂直統合が進められている。

コストを極限まで抑えるため、「小布米」の演算ユニットには、中国メーカー瑞芯微(ロックチップ)のシステム・オン・チップ「RK3588」を採用し、約6兆回/秒(6TOPS)のエッジAI演算能力を実現している。同時に、京東の「Joy Inside」などのクラウド型大規模言語モデルと連携することで、端末側の演算能力不足を補完している。

さらに、制御系、駆動系、実行部品に至るまでが、松延動力におけるコスト管理の中核を成している。創業者の説明によれば、徹底したコスト削減を実現するため、主要部品の自社開発比率を高めるとともに、サプライチェーンの上流まで踏み込んだ垂直統合を推進。最上流の半導体や原材料を直接調達し、自社工場において設計・製造・組立までを一貫して行っているという。

5. 横断比較と産業トレンド

四社のサプライチェーンを横断的に比較すると、いくつかの構造的特徴が確認できる。

第一に、減速機分野におけるLeaderdriveへの集中である。少なくとも三社が同社製ハーモニック減速機を採用しており、ヒューマノイド分野における中核供給者としての地位を確立しつつある。2025年の産業用ロボット生産は前年比28%増と回復基調にあり、新興需要がこれを下支えしている。機械系基幹部品では、国産メーカーが明確な存在感を示し始めた。

第二に、半導体戦略の分化である。GalbotはNVIDIAを軸に算力と開発エコシステムを重視する。Unitree RoboticsはIntel、NVIDIA、全志科技を併用し、用途別最適化を図る。MagicLabは国産SoC中心で自主可控を追求し、Songyan DynamicsはRockchip採用によりコスト最優先の設計を行う。各社のチップ選択は、製品定位と市場戦略の差異を端的に反映している。

第三に、垂直統合モデルとエコシステムモデルの併存である。MagicLabとSongyan Dynamicsは内製化比率を高め、設計から製造まで掌握する。一方、GalbotとUnitree Roboticsは外部専門企業との分業を活用し、自社は中核技術に集中する。前者はコスト管理と迅速な改良に強みを持つが、投資負担が大きい。後者は軽資産で拡張性が高いが、将来的な利益率や供給安定性が課題となり得る。

総じて見ると、減速機やモーターなど機械系部品では国産優位が形成されつつある一方、最先端AIチップでは依然として海外企業への依存が残る。ヒューマノイド産業は量産元年を迎えたが、サプライチェーンの自立と国際分業の間で揺れる過渡期にある。

6. 結語

春晩の舞台は一夜で終わる。しかし、その裏で進む産業構造の再編は始まったばかりである。四社の選択は対照的だが、いずれも中国ヒューマノイド産業の現在地を映し出している。華やかな演出の背後にあるのは、静かで粘り強いサプライチェーン競争である。

(中国経済新聞)