上海市はこのほど、「上海高度自動運転引領区『模速智行』行動計画」(以下、「行動計画」)を発表した。計画では、2027年までにスマートバス、スマートタクシー、スマート大型トラックなどの分野で、L4(高度自動運転)技術の本格的な社会実装を進め、累計で600万人以上の旅客輸送、貨物輸送では80万TEU(20フィートコンテナ換算)超を実現することを目標としている。
自動運転の開放エリアを大幅拡大
旅客・物流分野の飛躍的な拡大に向け、上海市は自動運転の適用シーンをさらに広げる方針だ。行動計画では、以下の取り組みが盛り込まれている。市全体で自動運転の開放エリアを約2000平方キロメートルに拡大自動運転が可能な道路延長を5000キロメートル以上に拡充「五つの新城」や空港、鉄道駅などの重点エリアで技術実証と実用化を推進。
このほか、無人配送車や無人巡回車、自動バレーパーキング(自動駐車)についても、運営基準やビジネスモデルの検討を進めるとしている。
L4商用化への懸念が後退、企業投資に追い風
上海の大手交通事業者である大衆交通のイノベーション事業部総経理、葛磊氏は《経済参考報》の取材に対し、「これまでL4レベルの営業用車両の投入には慎重な見方があったが、今回の政策により安全性や制度面の見通しが明確になり、投資への自信が高まった」と語った。
今後は、制度整備の進展とともに車両規模の拡大や、持続可能なビジネスモデルの構築が期待される。また、一般市民が自動運転車に触れる機会が増えることで、理解と信頼の醸成にもつながると指摘した。

無人タクシー、浦東で実証運行
関係者によると、2025年7月、上海市は「運転席無人」のスマートコネクテッドカーに対する示範運行許可を発給した。大衆交通と百度智行(バイドゥ・アポロ)が組む共同運営体も、この認可を受けている。同年9月からは、浦東新区の特定エリアにおいて、無人タクシーの実証運行がスタートした。
葛氏は「安全確保を前提に、試験運行の規模やエリアをさらに拡大し、空港や高速鉄道ターミナルなど短距離移動での活用を模索したい。交通拠点で頻発しているタクシー利用者と運転手のトラブル緩和にもつながる」と述べ、自動運転タクシーが都市生活に急速に浸透しつつあるとの認識を示した。
L4量産化と中核技術の国産化を推進
行動計画では、製造および研究開発面における具体的な数値目標も明示されている。
2027年までに、
L2(運転支援)およびL3(条件付き自動運転)車両が新車生産の90%以上を占める
L4自動運転車の量産化を実現する
ことを目指す。
あわせて、車載向け高性能演算チップ、車載オペレーティングシステム、知能化計算プラットフォーム、ステアリングやブレーキを電子制御する「線制御(バイワイヤ)システム」など、中核技術の研究開発を重点的に進める。
無人鉱山ダンプを手がける伯镭科技(ボールイ・テクノロジー)の関係者は、「線制御システムの強化という方針は、自社の技術戦略と一致しており、研究開発への確信をさらに強めた」と語る。産学官連携の強化により、技術成果の産業化やエコシステム構築が加速すると期待を示した。
自動運転向け保険商品の整備も加速
行動計画は、保険制度の革新にも踏み込んでいる。自動運転技術の進展と産業化に対応した保険商品の開発を加速させる方針だ。
物流向け無人車を展開する新石器(ネオリックス)の担当者によると、同社の無人配送車は企業または提携先が一括して保険に加入しており、対人・対物を含む第三者責任保険の補償額は地域ごとの要件に応じて設定されている。一般的な補償額は300万元〜500万元で、日本円ではおよそ6000万円〜1億円に相当する。
一方、旅客向け自動運転車については、現在は実証運行段階にあり、すでに保険は付保されているものの、通常のタクシーとは異なる設計となっている。業界関係者は「今後、運行データを継続的に蓄積し、常態化した商業運行に対応できる保険商品の整備が不可欠だ」と指摘している。
(中国経済新聞)
