2026年のスタートと同時に、中国アニメ界で注目を集める新作が登場した。動画配信サービス・優酷(Youku)が配信を開始したアニメ『光陰之外(Beyond Time)』 だ。
本作は、いわゆる「修仙(中国式ファンタジー)」の世界観を、文明が崩壊した終末世界(ポストアポカリプス)に持ち込んだ異色作。配信開始直後から大きな話題となり、優酷では新作アニメとして過去最高クラスの注目度を記録した。
配信初日の注目度は記録更新し、新作ランキングやアニメランキングで軒並み1位を獲得。さらに、配信後1週間にわたって売上ランキング首位をキープするなど、2026年序盤の中国アニメを代表するヒット作となっている。

修仙なのに終末世界? これまでにない設定が新鮮
『光陰之外(Beyond Time)』は、中国の人気小説投稿サイトで支持を集めた、作家・耳根(アー・ゲン)の同名小説が原作。舞台は、空に「神の顔」が浮かび、人類文明がほぼ崩壊した世界だ。
主人公は少年・許青(シュイ・チン)。食料も安全も保証されない過酷な環境の中で、彼は修行を重ね、生き延びながら世界の理不尽に立ち向かっていく。
従来の修仙作品によくある、空を飛び、仙人が住む美しい世界とはまったく違い、本作で描かれるのは荒れ果てた大地、壊れた街、命の重みが常に突きつけられる現実だ。
「修行=強くなるための手段」であると同時に、「生き残るための必死な選択」として描かれる点が、大きな特徴となっている。
音楽に“伝統芸能”を使用? 独特な世界観が話題に
視聴者の間で特に話題になっているのが、作品の演出面だ。
終末世界を彩る音楽には、中国・陝西省の伝統的な歌劇音楽である秦腔(しんきょう)を大胆に使用。その力強く、どこか哀しみを帯びた旋律が、荒廃した世界観と強く結びつき、他のアニメでは味わえない雰囲気を生み出している。
SNSでは、「世界観に一気に引き込まれた」「映像と音楽の組み合わせが強烈」といった感想が多く投稿され、関連話題の閲覧数は2億回を超えたという。
強いけれど万能ではない――共感を呼ぶ主人公像
主人公・許青は、いわゆる“最初から最強”のタイプではない。厳しい環境の中で身につけた冷酷さを持ちながらも、心の奥には他人の命を大切にする優しさを残している。

脚本を担当した劉士朋は、「彼は残酷な世界に適応した結果、強くなった。しかし、人として大切なものは失っていない」と語る。
ただ敵を倒してスカッとする作品ではなく、「こんな世界で、それでも人であり続けられるのか」という問いを投げかける点が、多くの視聴者の心をつかんでいる。
中国アニメの“本気”を感じさせる一本
『光陰之外(Beyond Time)』のヒットは、優酷が近年力を入れている「高品質アニメ路線」の成果でもある。同社はここ数年、作画・演出・原作力のすべてにこだわった作品を次々と投入しており、中国アニメ全体の評価を押し上げている。
本作はその中でも、「終末世界×修仙」という挑戦的なテーマに真正面から取り組んだ意欲作と言えるだろう。
日本のアニメファンにとっても、「異文化ファンタジー」「ポストアポカリプスもの」「ダークで重厚な物語」が好きなら、一度チェックしておきたい作品だ。
(中国経済新聞)
