中日両国はデカップリングを避けるべきだ

2025/11/20 11:15

高市早苗氏が首相に就任してわずか1か月のうちに、中日関係が全面対決の瀬戸際に陥るとは、誰も予想していなかった。

中国にとって「台湾問題」は国家の核心的利益の中でも最核心の部分であり、誰にも触れられない絶対的なレッドラインである。日本は島国であるため、中国が5000年の歴史の中で一寸の土地を巡って血みどろの戦争を繰り返してきた事実を理解できない。中国人にとっての「国土」への執着、「国家統一」への執念は、日本人には到底理解しがたいものだ。「誰が江山を失えば、歴史の罪人となる」という考えは、中国人の血の中に深く刻み込まれ、すべての中国人のDNAに組み込まれている。

一方、日本にとって台湾海峡は海上ライフラインであり、経済と国民生活に直結する国家の利益がかかっている。これは理解できる。しかし、その利益と訴求をどう守るのか? ここにこそ知恵が求められる。

「台湾海峡の平和と安定を維持する」ことこそが、日本にとって最も国益にかなう道である。その「平和と安定」をどう維持するか? 日本が最もすべきことは、自らの影響力を発揮して台湾当局に中国大陸との関係改善を強く促し、平和統一へと向かう協力の枠組みを構築することである。同時に、中国政府に対して「海上ライフライン」への懸念と要望を伝え、中国側の理解と支持を得て、自国の利益を最大限確保することだ。最悪の選択は、台湾と中国大陸の間に明確に「どちらかの側に立つ」ことであり、一方を支援し、他方を抑圧することである。

高市首相は長年、一方的な「親台」姿勢と中国政府への敵対的態度を取り続けてきたため、国会答弁で次のように発言した。

「戦艦を使って武力の行使も伴うものであれば、存立危機事態になりうる」

つまり、中国が台湾に対して戦争を起こした場合、日本も武力行使の可能性があるという趣旨である。

歴代首相は常に「個別具体的な状況に即し、情報を総合して判断する」という曖昧な表現に留めてきただけに、高市首相がここまで直接的に「自衛権の行使」を宣言し、戦争に巻き込まれる可能性を示したことは異例である。そして高市氏の頭の中では、その巻き込まれ方は、中国政府と直接交戦して「台湾を守る」ことにある。

一部では、この発言は立憲民主党の岡田克也前代表に誘導され、罠に嵌められたものだと言われている。しかし、これは高市氏の慣性思考そのものである。彼女の潜在意識では、台湾は「味方」、中国政府は「敵」なのだ。だが、彼女は自分が最も重要な立場——日本国首相であることを忘れている。

中国政府が発言の撤回を求めたのに対し、高市首相は面子のために拒否した。当然、中国も面子を重んじる国である。一連の報復措置(日本への渡航自粛要請など)で圧力をかけ、謝罪を迫っているが、高市首相は徹底抗戦の構えを見せている。

経済安全保障担当大臣・小野田紀美氏は11月18日の記者会見で、中国の各種圧力措置に対し、日本企業に警鐘を鳴らした。「ちょっと気に入らないとすぐに経済的強制に出る国に過度に依存することは、サプライチェーンだけでなく観光業にもリスクをもたらす」と述べ、企業に対してリスク低減を強く促した。

これは閣議後の発言であり、高市内閣が中国に一切屈しない姿勢を示すとともに、中国との全面的「デカップリング」を準備する重要なシグナルでもある。

連立与党である日本維新会の吉村洋文代表も同18日の記者会見で「中国人観光客がゼロになっても成り立つビジネスモデルを構築しなければならない」と強調した。

これで、中日両国は全面対決の時代に突入したと言える。

2012年の尖閣諸島(中国名・釣魚島)問題で日本が初めて中国投資の「政治リスク」を認識し、中日経済のデカップリングが始まったとすれば、今回コントロールを誤れば、過去数十年にわたる両国の政治・経済協力の基盤が完全に崩壊する。中国人観光客の激減、希土類などの対日供給停止、「日本製品不買運動」の再燃は日本経済に大きな打撃となる。一方、日本企業は中国からのサプライチェーン切り離しを加速し、中国への直接投資意欲を大幅に低下させる。日本政府はハイテク分野での対中投資審査・規制を強化する。これらは中国経済の回復にも悪影響を与える。

明らかに、中日両国は隣国であり、和すれば両国に利あり、闘えば両国とも傷つく。

2012年以降で最も寒い時代を超えて、完全なデカップリング時代に陥るのをどう避けるか?高市首相の態度が決定的に重要である。高市首相には、日本国家と国民の利益の上に立ち、自身の言動と思考を是正してほしい。両国政府がこの重大な危機において、冷静に対立のテンポと強度をコントロールし、関係のさらなる悪化と偶発的な軍事衝突を避けることを強く望む。

(文:徐静波)

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【筆者】徐静波、中国浙江省生まれ。1992年来日、東海大学大学院に留学。2000年、アジア通信社を設立。翌年、「中国経済新聞」を創刊。2009年、中国語ニュースサイト「日本新聞網」を創刊。1997年から連続23年間、中国共産党全国大会、全人代を取材。2020年、日本政府から感謝状を贈られた。

 講演暦:経団連、日本商工会議所など。著書『株式会社中華人民共和国』、『2023年の中国』、『静観日本』、『日本人の活法』など。訳書『一勝九敗』(柳井正氏著)など多数。

 日本記者クラブ会員。

(中国経済新聞)