中国飲料大手・ワハハ集団に大きな動きがあった。
10月10日夜、中国の複数メディアが報じたところによると、ワハハ集団有限公司の董事長(取締役会長)である宗馥莉(ゾン・フーリー)氏が、9月12日付で法定代表人、董事(取締役)および董事長などすべての役職を辞任したことが明らかになった。報道に対しワハハ集団は「辞任は事実」と認めている。
なお、現時点で杭州ワハハ集団有限公司の登記情報には変更はないものの、企業情報サイト「企査査」によれば、宗氏は引き続き同社の第2位株主として名を連ねている。
宗馥莉氏、次世代経営者としての歩み
宗馥莉氏は1982年、浙江省杭州生まれ。
2018年にワハハ集団ブランド広報部長に就任し、2020年には販売会社副総経理、2021年には副董事長兼総経理に昇進した。
2024年8月、創業者であり父親でもある宗慶後(ゾン・チンホウ)氏の死去に伴い、宗馥莉氏が法定代表人および董事長に就任。ワハハのトップとしてグループ全体を率いてきた。
辞任の背景、「娃小宗」ブランドへの独立経営
関係者によると、今回の辞任は商標使用に関する「不適切な運用」が一因とされている。宗馥莉氏はこれを機に、自身の新ブランド「娃小宗(ワ・シャオゾン)」の経営に専念する意向を固めたという。
「娃小宗」は、宗氏が掌握する宏勝(ホンション)グループが2025年に立ち上げた無糖茶飲料ブランドであり、商標の出願者もワハハではなく宏勝グループとなっている。同ブランドの商標は、食品、飲料、即席食品など複数の分野で登録申請されている。
5月に登場した「娃小宗」無糖茶は発売直後から市場で注目を集めた。さらに9月13日に流出した社内文書では、「2026年販売年度より『娃哈哈』ブランドを『娃小宗』に切り替える」との方針が示されており、落款日が宗氏辞任と同日の9月12日となっている。この文書には、宗馥莉氏の宏勝系企業7社の署名があった。
「娃哈哈」から「宏勝」へ、相次ぐ社名変更
9月以降、ワハハ関連会社の多くが相次いで「宏勝(ホンション)」への改称を進めている。
山西宏勝飲料有限公司、西双版納宏勝飲料有限公司、宜昌宏勝飲料有限公司などに加え、虎林娃哈哈飲料有限公司は「虎林市宏勝飲料有限公司」に、南陽娃哈哈昌盛飲料有限公司は「南陽宏勝恒枫飲料有限公司」に変更された。
今年に入ってからだけでも10社以上のワハハ関連会社が「宏勝」を冠する社名へと転換しており、宗氏の新体制が加速している様子がうかがえる。
宏勝グループの成長と新戦略
宏勝飲料集団有限公司は2003年に設立され、2007年から宗馥莉氏が経営を主導している。
同社はワハハの生産を支えるOEM(受託製造)企業として出発したが、宗氏の下で「食品・飲料の全産業チェーン専門企業」へと大きく進化。現在は飲料製造を中心に、上流の原料供給、高級設備製造、包装印刷なども手掛け、飲料生産に関わる一貫ソリューションを提供している。
さらに、今年に入り「娃小宗」「宗小哈」「娃小哈」といった新ブランド名で複数の商標を出願。すでに一部は「初審公告(商標登録の最終段階)」に達しており、新ブランド展開の準備は着々と進んでいる。
ワハハの次章は――
創業者・宗慶後氏亡き後、ワハハは中国飲料業界の象徴的存在として、次の一歩を問われている。
宗馥莉氏の辞任と「娃小宗」ブランドの独立は、親子二代にわたる企業経営の“分岐点”とも言える。
かつて「中国の国民飲料」と呼ばれたワハハが今後どのように再構築されるのか、
そして宗馥莉氏が新ブランドでどこまで新しい市場を切り開けるのか、 中国飲料業界の注目が集まっている
(中国経済新聞)