9月16日、香港高等法院は、中国恒大集団の清算人に対し、創業者で元会長の許家印氏の資産資産接収を命令し、Keith Ho氏を監督弁護士に任命した。法院はさらに、許家印氏名下の資産に対し、価値77億ドル(約1兆1500億円)以内のグローバルな処分禁止命令を発令。これにより、恒大の債務回収に向けた清算手続きが本格化する見通しだ。以下、この判決の詳細と背景を報告する。
9月16日午前、香港高等法院は恒大の清算手続きに関する審理を開き、清算中の中国恒大の申請を支持した。法院は、清算人の黄咏詩氏と杜艾迪氏を接管人として任命し、許家印氏の資産および彼が支配する会社の資産接収する権限を与えた。管轄範囲は、許家印氏の個人財産から関連企業まで広範に及び、債権人への返済資金確保を目的とする。
同時に、法院はグローバルな資産凍結命令を発令。許家印氏側が77億ドル以内の資産を処分することを禁止した。この命令は、恒大の債務総額が約2.4兆元(約50兆円)に上る中、創業者個人の「不正所得」を追及するための重要な措置だ。監督弁護士のKeith Ho氏は、清算人の活動を監視し、資産の透明性を確保する役割を担う。
許家印氏の資産には、1機のエアバスA319、1機のエアバスA330、湾流G450プライベートジェット、2隻のヨット、ロールスロイス・ファントムシリーズの高級車などが含まれる。これらの豪華資産は、恒大の債務危機以前の繁栄を象徴するが、現在は凍結対象となっている。

許家印氏と奥様の丁玉梅氏
この審理で、許家印氏の前妻である丁玉梅氏が提出した法的申請により、家族のプライベートな情報が意外に暴露された。丁玉梅氏は、既知の2人の成人息子(許智健氏、許勝鶴氏)以外に、2人の未成年子女を有することが明らかになった。丁玉梅氏は「プライバシーの保護」を理由に、恒大清盤事件の審理を非公開とするよう申請。公開審理が、自身と2人の未成年子女および2人の未成年孫子女の生活に悪影響を及ぼすと主張した。
しかし、法院はこれを却下し、審理を公開で行った。この暴露は、恒大危機の渦中にある許家印氏の私生活に新たな注目を集めている。ウェブ上の報道によると、丁玉梅氏は恒大危機後、数百億元規模の資産を移転した疑いが持たれており、英国ロンドンで33軒の豪邸を購入したとの情報もある。これらの動きは、清算人による追及を複雑化させている。
中国恒大集団は、2021年に債務危機が表面化し、総負債2.4兆元、総資産1.74兆元という巨額の赤字を抱えて香港高等法院に清算を申請された。2024年1月、正式に清算命令が下り、2025年8月には香港証券取引所から上場廃止となった。清算人は、許家印氏ら経営陣から約60億ドルの配当金や報酬を追及しており、許家印氏自身は2023年9月から中国当局による拘束を受け、資産開示を拒否している。
今回の判決は、清算手続きの「実質段階」に入ったことを示す。彭博社などの報道では、清算人が許家印氏の資産を重点的に追及し、境外移転された427億元(約8000億円)の財産も対象としている。恒大の債権人総額は約450億ドルに上り、回収は極めて困難だが、この判決により一部の資金回収が期待される。一方で、許家印氏の「失踪」状態や関連人物の国外逃亡が、清算をさらに難航させている。
(中国経済新聞)