テンセント、米国対中AIチップ輸出規制の不確実で、十分な在庫とAI戦略を推進

2025/08/14 19:30

テンセント(腾訊)は8月13日夜、2025年第2四半期決算電話会議を開催し、米国トランプ政権が提案する対中AIチップ輸出規制の調整について、同社社長の劉熾平(Martin Lau)がコメントした。劉氏は、現在の状況について「明確な結論には至っていない。中米両政府が交渉中で、最終的な結果を待っている」と述べ、規制の不確実性を指摘した。一方で、テンセントは十分なチップ在庫を確保しており、AIモデルのトレーニングやアップグレードに支障はないと強調した。

劉氏は、テンセントがAIモデルの開発と運用を支えるための十分なチップ在庫を保有していると明言した。「我々はモデルのトレーニングとアップグレードに必要な十分なチップを確保している。また、推論チップについても多くの選択肢を持っている」と述べ、さらにソフトウェアの改良とアップグレードを通じてトレーニング効率を高め、チップの負荷を最適化していると説明した。これにより、テンセントは外部の規制環境の変化に柔軟に対応しつつ、AI戦略を確実に推進している。

テンセントは、米国による対中チップ輸出規制が強化される前の2024年第4四半期に、積極的にGPU(グラフィックス処理ユニット)の調達を進めていた。また、2025年2月から3月にかけて、自社データセンターでの計算能力の増強を進め、各地で利用可能な計算リソースを確保する取り組みを行った。これらの戦略的な動きにより、テンセントは計算能力の制約を軽減し、AIアプリケーションの展開を加速させている。

8月13日に発表されたテンセントの2025年第2四半期決算では、AIへの投資がすでに収益に貢献し始めていることが強調された。AI技術は広告収入の20%増を牽引する主要な原動力となり、微信(WeChat)などの主力製品への統合も進んでいる。劉氏は、AI技術の活用により、広告のターゲティング精度やコンテンツ推奨アルゴリズムが向上し、ユーザーエンゲージメントと収益の両方が強化されていると説明した。

さらに、テンセントはゲーム事業の力強い回復と企業向けサービスの成長加速を報告。AIを活用したゲームのユーザー体験向上やクラウドサービスの強化が、事業全体の成長に寄与している。また、資本支出はAI能力の構築に向けて倍増したが、チップの輸入や調達に関しては慎重な姿勢を維持し、GPU供給の変動に過度に依存しない戦略を採用している。

米国政府は近年、半導体やAIチップの対中輸出規制を段階的に強化してきた。2024年3月、米国商務省産業安全保障局(BIS)は、NVIDIAやAMDの先進AIチップの中国向け販売を全面的に制限する新規則を発表。さらに、2025年1月からは、半導体、量子技術、AI分野への米国からの投資を制限する規制が施行される予定だ。これらの措置は、中国のAI産業の発展を抑制することを目的としている。

劉氏は、これらの規制について「状況は変動的で不確実性が高い」と述べ、テンセントが規制の動向を注視しつつ、柔軟な対応策を講じていることを強調した。特に、テンセントは従来の「大規模な計算能力による大規模モデル」のアプローチを見直し、小規模な計算リソースで優れたAI効果を実現する技術革新を進めている。これにより、チップ供給の制約を受けても、AIモデルのトレーニングと推論の効率を維持・向上させている。

テンセントは、AI技術の深化と応用を通じて、広告、ゲーム、クラウドサービスなどの主要事業でさらなる成長を目指している。微信エコシステム内でのAIエージェントの展開や、「元宝」などのAIネイティブ製品の開発も進めており、これらがユーザー体験の向上と新たな収益源の創出に貢献すると期待される。

米国による対中技術規制の不確実性が続く中、テンセントはチップ在庫の確保とソフトウェア最適化を通じて、AI戦略の持続可能性を高めている。劉氏は「我々はAIコストを管理可能な範囲に抑えつつ、事業成長を加速させる」と述べ、規制環境の変化に左右されない強固な基盤を構築する姿勢を示した。

(中国経済新聞)