トランプ政権、中国人及び「敵対国」の米国農地購入を全面禁止へ

2025/07/9 18:00

7月8日、米国農務省のロリンズ長官は議会で、国家安全保障と米国農地の所有権保護を理由に、中国人および米国が「敵対的」とみなす国の市民による米国農地の購入を全面禁止する方針を発表した。さらに、トランプ政権は「国家安全保障」と「食糧安全保障」を名目に、中国やロシア、イランなどの「外国の敵対国」が所有する農地の回収を検討している。この政策は名目上複数の国を対象としているが、実質的には中国を主な標的としており、中国人投資家の資産に大きな不確実性をもたらしている。

長年にわたり、中国人投資家による米国農地の投資額は全体のわずかな割合にすぎなかった。それにもかかわらず、トランプ大統領は大統領選のキャンペーン中から、中国による農地購入が国家安全保障に深刻な脅威をもたらすと繰り返し主張してきた。この主張は、単なる経済的利益や伝統的な安全保障の枠組みを超え、米国社会における中国に対する独特なリスク認識を反映している。

米国では、中国からの投資に対するリスク評価が保守的になりがちだ。この背景には、米中間の社会制度、発展段階、歴史的・文化的差異がある。これらの要因は、米国市民の間で中国に対する不信感や警戒心を増幅させ、特に農業のような戦略的分野で顕著に表れる。かつて両国指導者が協力の象徴として推進した農業分野は、今や投資審査の厳格化や技術的障壁といった政治的渦に巻き込まれている。

今回の農地購入禁止および既存資産の回収検討は、リスク認識の政治化をさらに深化させる措置である。米国は農地を単なる経済資産ではなく、食糧安全保障や国家の自給自足に関わる戦略的資源とみなしている。中国のような大国が農地を取得することは、米国の一部の政治家や市民にとって、食糧供給や農業技術の支配を脅かす可能性があると映る。このような懸念は、具体的なデータや事実に基づくよりも、感情的・心理的な要因によって増幅されやすい。

この政策は、中国人投資家にとって重大な不確実性をもたらす。中国が保有する農地の回収が実行されれば、投資家の財産権が侵害される可能性があり、米中間の経済的緊張が一層高まるだろう。また、中国側が報復措置を取る可能性もあり、両国の経済関係はさらに悪化するリスクがある。

米国国内では、農地市場にも影響が及ぶ可能性がある。外国投資の制限は農地の市場価値や流動性を低下させ、農家の資金調達や事業拡大に制約をもたらすかもしれない。さらに、農地回収という前例のない措置は、米国の投資環境に対する国際的な信頼を損なう恐れがある。

米中関係において、農業はかつて経済的相互依存を深めるための協力分野だった。しかし、今回の政策は両国間の信頼をさらに損ない、対立を助長する可能性が高い。米国が国家安全保障を名目にこうした措置を進める一方で、具体的な脅威の根拠を明確に示し、国際的な経済協力を損なわないバランスを取ることが求められる。

(中国経済新聞)