日本政府観光局(JNTO)が2025年6月18日に発表したデータによると、5月の訪日外国人観光客数は369万3300人に達し、前年同月比で21.5%増加した。これは5月としての過去最高記録であり、観光需要の旺盛さを示している。特に、中国からの観光客が前年比44.8%増の78万9900人を記録し、急増が顕著だった。この背景には、中国と日本を結ぶ航空便の増便や、円安による旅行コストの低下など、複数の要因が絡んでいる。
5月の全体の訪日客数は、4月の390万8900人(単月最多)を下回ったものの、1月からの累計では1814万100人に達し、年間4000万人を超えるペースで推移している。JNTOは、韓国や中国を始めとするアジア市場の回復がこの成長を牽引していると分析している。

国・地域別の統計では、韓国が82万5800人(前年比11.8%増)でトップを維持したが、中国の78万9900人(前年比44.8%増)はそのすぐ後を追い、際立った伸び率を示した。この急増の主な要因として、以下が挙げられる。
日中間の航空路線が大幅に強化された。5月には中国からの直行便が増便され、特に地方都市へのアクセスが改善した。例えば、帯広や仙台など、従来は訪日観光の主要ルートではなかった都市への便が新設または増便された。これにより、中国人観光客の目的地が多様化し、都市部だけでなく地方観光も活況を呈している。
2025年5月の為替レートは、1ドル=約143円と、前年同月比で円安傾向が続いた。中国人民元に対する円の価値も低下しており、中国人観光客にとって日本での宿泊、食事、ショッピングが割安になった。これが、特に若い層や中間層の旅行意欲を刺激した。
中国のSNSプラットフォーム(WeChatや抖音など)を活用した日本の観光キャンペーンが功を奏している。JNTOや地方自治体は、中国人観光客向けに日本の自然、食文化、温泉、伝統行事などを積極的にPR。特に、桜や新緑の季節である5月は、観光地としての日本の魅力を最大限にアピールできる時期であり、訪日需要を押し上げた。
一方で、23の国・地域のうち、香港からの観光客は唯一減少した。5月の香港からの訪日客は19万3100人で、前年比11.2%減だった。この背景には、SNS上で拡散した「日本で大災害が起きる」という根拠のないデマが影響したとみられる。これにより、香港からの旅行需要が抑制され、関西国際空港や仙台空港では香港便の運休や減便が相次いでいる。
観光庁の秡川直也長官は18日の記者会見で、「香港市場の動向を注視し、必要に応じて正確な情報発信を行う」と述べた。JNTO香港事務所も、科学的根拠に基づく公的機関の情報を参考にするよう、中国語で呼びかけを行っている。
中国人観光客の急増は、日本経済にとって大きなプラスだ。観光庁によると、訪日客1人当たりの平均消費額は約20万円で、特に中国人観光客はショッピングや高級宿泊施設の利用に積極的である。5月のデータからも、中国人観光客が日本経済の活性化に大きく貢献していることがうかがえる。
しかし、香港での事例が示すように、SNS上の誤情報が観光需要に影響を与えるリスクも浮き彫りになった。JNTOは、今後さらに中国市場向けの情報発信を強化し、正確で魅力的なコンテンツを提供することで、訪日意欲を維持・拡大する方針だ。また、地方空港の活用や季節ごとの観光資源のPRを通じて、訪日客の地域分散を進め、観光地の混雑緩和や地方経済の活性化を目指す。
5月の中国人観光客の急増は、日本がアジア最大の観光市場である中国との関係をさらに深化させるチャンスである。航空アクセスの向上、円安の恩恵、そして戦略的なプロモーションが、この勢いを支えている。今後、誤情報の影響を最小限に抑えつつ、持続的な観光振興策を展開できるかが、日本の観光産業の鍵となるだろう。
(中国経済新聞)