人型ロボットの進化が進んでいる中国で、人とのやり取りで大切な接続口となる「ロボットハンド」が産業的に重要な存在になっている。このところ民間企業の取り組みや技術の進歩に伴って用途も拡大の一途をたどり、急速な成長を果たしている。
ロボットハンドの会社が、このところ相次ぎ融資を獲得している。先ごろ、ロボットとブレイン・マシン・インターフェース(BMI)に注力する傲意科技がB++ラウンドで、インフィニティキャピタル、浙江省の国有資本運営会社の傘下である同省発展資産経営会社、沃美達資本より1億元近い融資を得た。ロボットハンドの研究開発を加速させ、新製品の発売につながり、さらには製造体制の整備や市場開拓などに費やすことになる。

またその前の4月上旬に、「ロボットハンド+クラウド頭脳」の開発を手掛ける「身体性ロボット」のメーカー・霊心巧手(LINKERBOT)が、ロボットハンド分野におけるシードラウンドとして過去最高額となる1億元以上の資金調達を果たした。紅杉のシードファンドと万凱新材の投資、および力合資本、力合金融、華倉資本、鞍羽の追加出資によるものである。
続いて、同じくロボットハンドメーカーの因時機器人(INSPIRE ROBOTS)も4月末に、神騏資本の出資に源禾資本、華盖資本が追随した形で1億元近いB3ラウンドの融資を得たと発表した。
ロボットハンドはこのような支援をバックに、極めて人に近く、操作も入念で、環境に適応する形へと急成長しており、技術革新を繰り返して実用化へとまい進している。
高精度な組み立てや精密な仕分け、複雑な測定を実行し、手術のサポートやリハビリトレーニング、義手や義足のコントロールをし、爆発物除去や救助、宇宙での作業など危険な業務もこなすロボットハンドを手掛ける浙江省の霊巧智能科技のCEOである周晨氏は、「人型ロボットや工業用ロボットの基幹部位である手の部分が柔軟で正確な動きを実現することで、製造業やヘルスケア、生活面、特殊用途、技術研究、そしてアート制作、教育など、様々な分野で利用され、人とマシンの協調範囲をさらに広げている」と述べている。
周氏は、「ロボットハンドは技術面で進化を繰り返しており、主な品種では自由度(手の関節の数と運動方向の数)が、これまでの6から12に、そして22に増えた。伝達機構についてはコアレスモーターが主流になっており、その仕組みもより精巧な「腱駆動+遊星ローラースクリュー」の併用型が主に採用されている。感覚のインテリジェント化については、触覚やマルチモードセンサーが定着しつつあり、AI大規模言語モデルのおかげで大幅なスキルアップを果たした」と説明する。
戴盟機器人(Daimon Robotics)は4月16日に、マルチな触覚を備えた5本指のロボットハンド「DM-Hand1」を発表した。自由度が高く、力覚混合制御アルゴリズムとミリ単位の厚みを備えた視触覚センサーを結びつけ、物をつかむ力を制御したり、割れ物や壊れやすいものも柔軟に扱ったり、精密に部品を組み立てたりすることが可能なものである。
その前の4月1日には宇樹科技(ユニツリー)が、ロボットハンド「Unitree Dex5」のデモ映像を発表した。「自由度」を片手当たり20件(アクティブ16 +パッシブ4)搭載したもので、バックドライバや正確な制御に対応し、高感度な触覚センサーを94個搭載し、「トランプ」「ルービックキューブ」「ページめくり」など人間にかなり近い動きを完成させている。
東呉証券はレポートで、「ロボットハンドは人型ロボットの操作性能の中心であり、ロボットの機能の限界を決めるもの」と記している。今後2年間は本体および部品のメーカーで取り組みも急速に更新され、実用化も進んで、人型ロボットの頭脳との一体化トレーニングも加速するという。
業界内で2025年が人型ロボットの量産元年になると見られている中、方正証券は「ロボットハンドは人型ロボットの重要なハードウェア部分で、統合や自由度の拡大といった傾向が広まり、人型ロボットが産業化することで100億元クラスの市場になるのではないか」と予測している。
国金証券もレポートで、「ロボット業界は、川上側で資本支出が拡大しハード面がコストダウン、それにより技術力が向上し川下側で実用性が高まる、という好循環のエコロジーが形成され、新たな市場活性化が続きそうだ。この中でロボットハンドの価値の割合は30%以上になるだろう」と表明している。
このように産業化が加速するロボットハンドについて、上場会社が続々と前向きな取り組みをしている。
(つづき)
(中国経済新聞)