有名投資会社のゴールドマンサックスが最近発表したレポートによると、中国ではペットの数が4歳以下の乳幼児の数を上回った。結婚したがらない若者たちがペット飼うことで「子育て」体験を味わおうとしている。ペットに関する需要も多様化するなか、新たな職業も生まれている。ペットの持病を治療するためにお金をかけて鍼灸師を呼ぶなど漢方医が人気を集めているほか、行方がわからなくなった時にそれぞれ適した捜索方法を実行してくれる「ペット探偵」を呼ぶ飼い主も多い。さらに、ペットの考えていることを知ろうと動物カウンセラーに相談する人までいる。iiMedia Researchによると、中国は2023年、ペット関連の産業規模は5928億元である。
「ペットも虚弱になる 陰陽五行はやはり大事」
ペット鍼灸師で1990年代生まれの魏佳宇。2020年に東北農業大学大学院の漢方獣医学科を卒業して、上海のある動物病院に勤務している。脈を取ったり小猫や小犬の治療をしたり、その数は少なくとも1000匹以上になる。難病にかかったペットを連れて来る客がほとんどで、大学生もいればペットを子どものように育てるお年寄りもいる。動物の鍼灸の起源は戦乱の春秋時代における馬経大全にさかのぼる。現在、犬や猫の効果のあるツボを定められるのは、100か所近く表示されている昔の家畜ツボ図解のおかげなのだ。
以前、認知症を患ったコリー犬の治療をしたことがある。もう16歳で、その場で旋回したり壁の隅にぶつかったりして、人も見わけられなかった。MRIの結果、部分的な脳梗塞が判明したので、ミミズを含有した漢方薬を飲ませ、鍼灸療法を施した。1か月経つとまっすぐ歩けるようになった。
鍼灸はこのところ動物の治療方法として知られ、大変よく利用されている。1回につき200元前後である。以前これで顔面麻痺のコリー犬を治療した。診察に来た時、顔全体が垂れ下がっていて舌をだらりとたらし、体が一方に傾き唾液を垂れ流していた。詳しく尋ねると、この犬は腕白で、いつもエアコンの吹き出し口の下で仰向けになって寝ているという。そう、動物も人間と同じように、顔面麻痺となる原因のほとんどは風邪である。運動をして汗が出て、毛穴が開いたところへ風が入り込んで、冷気がたまってしまい、神経機能が麻痺してしまう。鍼灸治療を4-5回施した結果、顔のただれはほぼなくなった。
動物に鍼灸をする時は、小さな折り畳みイス状のラックの上でうつ伏せにして四つ足を延ばし、そっとしばりつける。
2. 1日に8万歩 発見したペットの数は1000匹以上
1990年代生まれのペット探偵、陳営。新手の職業であり、2020年から始めていて、のちにメンバーを結成した。これまで年平均200~300匹、合わせて1000匹以上のペットを探し出している。
捜索の対象の多くは犬や猫だが、中にはオウムやカメ、ウサギもいた。これらはみな、購入価格はわれわれの料金より安いが、飼い主にとっては欠かせない家族の一員であって、お金を惜しまずに探し出そうとする。ペットの性格はそれぞれ違う。捜索する際はまず、予想を立てるために時間をかけて彼らの生活習慣や行動論理を聞き出す。
料金はおおむね4000~5000元で、成功率は80%以上だ。ほとんど2日間以内に発見しており、見つからないのは大事な期間を逃してしまったか、誰かが連れ去って返そうとしない場合である。
ペット探偵はそう簡単な仕事ではなく、1日に3万歩以上歩くこともしょっちゅうだ。マンション全体、すべての通路や区画などを一通り探す。150棟もある団地群や30階以上のマンションも経験した。多い時には1日に8万歩、都合17時間も歩く。
ペットもれっきとした個体で、感情的欲求を持つ
1990年代生まれの動物カウンセラー、王温暖。この仕事を始めて3年になる。相談に訪れるのは一線都市の人が多く、8~9割は女性で、ほとんどが30歳前後の独身だ。ペットの症状で来る人ばかりで、飼い主である自分に感化されたり、けんか腰な態度をとったり、うつ病や不安障害を患ったりした動物を何とかしたいと考えている。また中には、ペットが自分のことをどう思っているのか、楽しくないのか、何を願っているのか知りたい、と言う人もいる。またあるいは、引っ越しに際し、ペットが見知らぬ恐怖や過激な反応をする確率をできるだけ抑えようと、あらかじめ声をかけたい、というケースもある。概してほとんどが心の健康に気を使っている。
ここ数年、動物に対する態度や考え方も少しずつ変わってきている。以前にある飼い主から、「引き取った猫が、自分の毛をむしり取って坊主頭にするなど自虐的な行動をとっている」と相談された。その猫は以前に2度ほど捨てられた経験があり、それがトラウマになっていることがわかった。猫からすれば、以前の飼い主は「汚い毛が嫌い」ということを知っていたので、また捨てられたりしないように無意識のうちにご機嫌取りをしようとしていたのである。力ずくで繰り返し毛を引き抜いたのは、心の中で二度と捨てられたくないと考えていたからであり、新しい飼い主に対する気持ちを示すものだった。この件で飼い主に対し、猫と一緒に過去のつらさを見つめるよう教えたほか、日ごろ一緒に過ごす際の注意事項を伝えた。それから1か月ほど経って、飼い主から「自虐的な行動も減って毛を抜いたりしなくなり、家の子供たちと一緒に遊んだりするようになった」と言われた。
今は、結婚や子づくりに対して消極的な若者が増えているが、一方で子供がそばにいてほしいとも願っているようだ。だからこそペットを飼う。権力的な関係の中でしばしば「育ててあげてるから言うこと聞いて」などという期待感を持つ人は多い。こうした中で、根深い人生の課題も考えさせられてしまう。
わわわれはこのような事例や教訓から、飼い主とペットがともに過ごす方法を示すことができる。これが動物カウンセリングであって、自分を見つめることにもなる。一見動物の問題であるように見えて、実はよくある無意識の世代間ギャップなど、家族全体に関わる問題でもある。今の人たちは精神的な成長を求め、動物を知りたがる。それは自分を知り、癒していくプロセスでもある。
(中国経済新聞)