BYD工程研究院院長、「固体電池が普及するには3~5年必要」

2024/10/1 13:30

中国電気自動車(EV)大手「BYD」のチーフサイエンティストでチーフエンジニアであり、自動車工程研究院の院長である廉玉波氏は9月27日、2024年世界新エネルギー車大会で、「固体電池について本格的に研究しており、広範囲に普及するまではあと3~5年かかる」と述べた。さらには「3年は難しい。5年はかかる」とも述べた。同氏はまた、「コスト面や材料などの制約もあるので、リン酸鉄リチウム電池が今後15年から20年は淘汰されず、固体電池が高級車用となるなど、車種ごとに使い分けられていく」との見通しを示した。

中国は今年に入り、固体電池が少しずつ産業化の「うねり」を迎えている。国内自動車メーカーでは「上汽集団」と「広汽集団」が、早ければ2026年に全固体電池の量産および実用化を果たすと発表したほか、「国軒高科」や「鵬輝能源」など車載電池メーカーも固体電池の開発を発表しており、2026年は量産化に向けての節目の時期となりそうである。

ただし業界内ではおおむね、大規模に生産するには製造工程や技術の改善に要する時間が必要だと見られている。中国科学院のアカデミー会員である清華大学の欧陽明高教授は、「企業による固体電池は急ぐべからずで、順を追って進めることが最速の道だ。まずは電解質の問題を処理し、後に負極、そして正極の問題を片づけることだ」と見ている。固体電池のエネルギー密度は、当初は想像したほど高くないにしても、電池の安全性を引き上げ熱管理システムを簡素化して、最終的に2030年に大規模な産業化をすることが目標だという。

企業サイドの見方としては、廉院長が示した上記の見解のほか、9月初めの2024年世界車載電池大会でBYDの電池部門CTOである孫華軍氏が、「われわれは今のところ、研究所の段階から工程へと移る状態にあり、研究所で大量のデータを出し大型電池を手掛けた結果、固体電池を大規模に生産するにあたり工程や界面など多くの問題があることに気づいた」と述べた。全固体電池を大規模に生産するにはまだ長い道のりを歩む必要があるという。

孫氏はまた、「固体電池や新素材など、次世代型電池の開発を引き続き強化するには、硫化物系も考える必要がある」とも述べた。硫化物系の固体電池は長持ちし充電が早いというメリットがあるという。2027年~2029年には主に中高級型のEVで先行利用され、2030年~2032年には主力のEVにも導入されて拡大期を迎えると見ている。

(中国経済新聞)