中国アニメ『百妖譜』―妖怪と人間の間に生まれるドラマ

2024/06/18 13:30

中国の小説「山海経」*に出てくる妖怪を取り上げたファンタジーアニメーション。中国のbilibili動画にて配信されると、その美しい作風と温かなドラマに涙する声が多く上げられた。2024年1月より日本語吹き替え版が公開された。

遥か昔。妖怪を専門に診る霊医の少女・桃夭は、幼い僧侶の磨牙とともに巡回診療の旅をしていた。ある時、桃夭は瀕死の狐の妖精と出会う。桃夭は狐自身の身体を薬として差し出すことを条件に狐を助け伴侶とし、旅を続けた。各地に住む人々や妖怪たちとの出会いを通し、儚い人間の運命や業に深く触れる二人の心には新たな感情が芽生えていくのだった。

『百妖譜』は妖怪の視点から見た人間を描いている物語。出会う妖怪ごとに様々な人間との交流の様子が楽しめる。良いこともあれば悪いこともある。感動的で思わず泣けるエピソードも多数、一度観ていただきたい作品である。

*『山海経』(せんがいきょう)は、中国の戦国時代から秦朝・漢代(前4世紀 – 3世紀頃)にかけて徐々に付加執筆されて、「奇書」扱いされている。編者は禹およびその治水を助けた伯益であると序などに仮託されているが、実際は多数の著者の手によるものと考えられる。内容のほとんどは各地の動物、植物、鉱物などの産物を記すが、その中には空想的なものや妖怪、神々の記述も多く含まれ、そこに古い時代の中国各地の神話が伝えられていると考えられている。そのため、古代中国の自然観や中国神話の重要な基礎資料となっている。

(中国経済新聞)