『アバター3』中国プレミア開催――“世界興行収入1位”の神話は再び塗り替えられるのか

2025/12/10 11:00

ディズニー関連作品の躍進が続くなか、年末の映画市場に再びビッグタイトルが登場する。『ズートピア2』が記録的な興行を続けている一方で、20世紀スタジオが手がける超大作『アバター3』(邦題未定、原題:Avatar: Fire and Ash)が中国で初お披露目された。第7回海南島国際映画祭に合わせて行われた中国プレミアには、監督のジェームズ・キャメロン、主演のゾーイ・サルダナが登壇し、大きな注目を集めた。

■ 世界興行収入ランキングに君臨する“アバター神話”

映画興行データによれば、世界歴代興行収入1位は『アバター』(2009年)の212億元。2位は『アベンジャーズ/エンドゲーム』の202.99億元、3位は同シリーズの続編『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(168.25億元)となっており、依然として“アバター”シリーズの存在感は圧倒的だ。

2009年の第1作は、3D映画の歴史を大きく変えた。制作費は5億ドルと、当時の中国年間興行収入の3倍に相当する巨額。キャメロン監督は自ら資金を投じて3Dカメラを開発し、映画制作と上映技術に革命をもたらした。中国では公開当時に13.4億元を記録し、2021年・2023年の再上映でも計4億元を追加するなど、長年にわたり観客の支持を集めてきた。

■ 期待と不安が交錯する“続編のジレンマ”

一方で、第2作『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は高い興行成績を収めたものの、第1作の記録突破には至らず。『アベンジャーズ/エンドゲーム』の壁を越えることもできなかった。

AIGC(生成AI)や映像技術が急速に進化する近年、巨大スクリーン、3D、4Dといった鑑賞形式は一般化しつつある。いま公開中の『ズートピア2』では4D版チケットが入手困難になるほどで、追加料金を設定する劇場も現れるなど、視覚体験の競争は激しさを増している。

文化・観光産業を研究する趙煥焱氏は、シリーズ作品が抱える課題をこう指摘する。

「観客の要求は年々高まり、ストーリー性や視覚効果への期待も大きい。大規模IPはスタートラインが高い一方で、初作を超える“驚き”を生み出すのは難しい。アバターはトップクラスの視覚作品だが、続編では初作ほどの衝撃はどうしても薄れる。鍵となるのは物語の力と、観客にどれだけ情緒的価値を提供できるかだ」

■ 流媒体との競争、映画館の未来は?

ストリーミングの普及が映画館の存在意義を揺るがす中、キャメロン監督は12月9日の会見で次のように語った。

「確かに流媒体は映画館の領域を侵食している。しかし映画館が“死ぬ”ことはない。AIGCが人間の創造力を完全に代替することもあり得ない」

映画体験の価値を再確認させる発言となり、観客との共存を図る映画界の姿勢が示された。

■ 中国市場を狙う“豪華版”施策 大物俳優の吹替起用も

ディズニーが20世紀スタジオを買収した後、アバターは同社最大級のIPとなり、商業価値は群を抜く。中国市場を重視するディズニーは、今回の公開に向けて豪華な陣容を揃えた。

中国語吹替版には、章子怡(チャン・ツィイー)、黄軒(ホアン・シュエン)、孫儷(スン・リー)、鄧超(ダン・チャオ)といったトップスターが参加。興行収入の底上げだけでなく、関連グッズやテーマパーク事業への相乗効果も期待されている。

『アバター3』は、栄光の“世界興行収入1位”の座を再び塗り替えることができるのか。それともシリーズ初作の神話は依然として超えられない壁として立ちはだかるのか。観客の審判は、まもなく下される。

(中国経済新聞)