中国の自動車大手「吉利ホールディングス」(Geely Automobile Holdings Ltd)(以下「吉利」)の李書福(Li Shufu)会長は、中国とマレーシアの国交樹立50年に際し、「マレーシアは自動車のサプライチェーンのコストが中国より30%前後、タイより10%以上高い。国内の部品の競争力が弱く、輸入に依存し市場規模も小さいことが主な理由だ」と述べた。またマレーシアにおける吉利の主な役割として、「自動車産業のサプライチェーンの競争力アップ」を挙げている。
このところ自動車の輸出が増えている中国は、BYD、長城(Great Wall Motor )、奇瑞(Chery Automobile)などの国内ブランドが続々とマレーシアに進出している。この中で吉利は、2017年に現地自動車メーカーのプロトンの株式49.9%を取得する形で進出を果たし、ブランド性をバックに事業展開している。吉利はマネジメントや技術、製品、労働力を送り込んで、プロトンの「X50」、「X70」、「X90」、「S70」をそれぞれ吉利の「繽越」((Bin Yue)、「博越」(Bo Yue)、「豪越」(Hao Yue)、「帝豪」(Di Hao)の各車種に対応させている。首都クアラルンプールにあるプロトン販売店の責任者は、これら吉利の各車種について「プロトンの中~高級車ラインナップであり、2023年は店内販売量の40%以上を占めた」と話す。
マレーシアでは現在、国内メーカーの「プロドゥア」とプロトン、および日系車種が普及しており、プロドゥアとプロトンの合計シェアがおよそ60%となっている中、吉利はプロトンの買収を通じて足場固めをしている。データを見ると、マレーシアに進出している中国メーカーの2023年の販売台数について、最も多い奇瑞でも4493台にとどまり、BYDは3728台である。一方で地元メーカーのプロトンは新車販売数が154497台で、このうち「X50」だけで3万台を超えている。また吉利は、Xシリーズ3車種の累計販売数が2023年末現在で20万台を超えている。
吉利は、マレーシアで地位を固めた上、プロトンを通じてASEANさらには世界への拡幅を狙っており、よって競争力のあるサプライチェーンを打ち立てることが極めて重要となる。プロトンの李春栄CEOは、「中国の自動車界は海外進出・海外参入・海外発展という3段階で世界へ向かう。海外進出は単なる輸出で、海外参入は吉利とプロトンの提携のように製品、技術、マネジメント、文化を統合すること、海外発展は開発やサプライチェーンの現地化やグローバル化だ」と述べている。
吉利はこの目標を見据え、マレーシアのタンジュンマリムでのオートモーティブ・ハイテク・バレー(AHTV)の開発に向け、2023年4月にプロトンの親会社DRB-HICOMと事業提携をすることで合意した。産学研および都市の4方面にまたがる事業であり、年産台数を25万台から2035年には50万台に伸ばす予定で、うち50%を海外向けとする。また部品100万件というサプライチェーンを打ち立て、ASEANの自動車産業の中心とする。マレーシアの国営通信社によると、吉利はこの事業に100億ドル(約1.56兆円)を投資するという。
吉利国際ホールディングスマレーシア現地法人の魏梅CEOは、「製造業基盤の弱いマレーシアで、コスト減や効率アップに向け、AHTVは吉利および世界の主な関連サプライヤーのマレーシア立地を促すものになる」と述べ。吉利の狙いは、中国での自動車製造スタイルを導入する形でマレーシアを海外展開への重要拠点とすることである。
(中国経済新聞)