世茂集団 「第二の恒大」になるのか

2022/08/1 12:00

中国不動産業界で激震が相次いだ去年あたりから、各都市でマンションの工事中断が増えている。各地方政府や不動産会社は、「引き渡し確保」を最優先に据えているが、売上不振による資金不足という現状にあって、本格的に建設工事を再開するのは相当の骨折りである。工事の中断について業界関係者によると、事業の売上金が流用されて工事にお金が回らなくなり、仕入元が代金を得られず、仕事に身が入らないことが原因だと話している。工事は再開してものろのろ状態だというのである。

その原因で、新築マンションが完成せずに入居予定者がローンの支払いをボイコットするという、「ローン返済拒否」が相次いでいる。7月15日現在、河南省、湖南省、江西省、河北省、広西自治区、山東省など20の地域の70か所で合わせて150軒以上のマンションで、「一定期間内に建設工事が再開されない場合は入居予定者がローンの返済を拒否し、そのリスクや損失は双方が負担する」との声明が発表された。

これらのマンションは、引き渡しが何年も遅れている未完成放置状態のもの、あるいは引き渡し時期は先だが業者が資金不足で工事再開が出来なくなっているものである。その多くは、恒大、世茂などが事業主となっている違約状態の案件である。

特に、世茂グループは債務不履行で、「第二の恒大」になるではないでしょうか、という噂が広がっている。

採石場の跡地に建てられたあの五つ星ホテルをご記憶だろうか。  

不動産開発大手の世茂グループが上海市松江佘山の国営リゾートエリア・天馬山に建設した上海佘山世茂洲際酒店(上海ワンダーランドIHCホテル)。海拔マイナス88メートルで、2021年9月に第18回中国土木工程賞「詹天佑賞」を受賞した。  

世界で最も低い所に位置するこのホテルは、世界中のホテルファンや旅行ファンの人気を集め、上海だけでなく中国全体の新たな「超人気」スポットとなった。実質的支配者である世茂グループもこのおかげで、業界内で存在感を示すようになった。  

しかし、同業大手である恒大が事業を再編し、融創や緑地などが相次ぎ債務不履行となり、都市部の有名建築物を手掛ける世茂も同様のピンチに立たされた。  

 売上高3000億元(約6兆1600億円)の不動産大手・世茂グループが債務不履行に。  世茂グループは7月3日夜、この日に期限を迎えた10億ドル(約1383億円)の公募債券について、元金の返済が不能となったと発表した。

2022年も半分を過ぎた中、中国不動産会社が続々と事業の縮小や見切り、値下げ、資金回収に走っており、物件の値下がりも鮮明である。以下、債務不履行に陥った例を挙げてみる。

 一、大手不動産の恒大、負債総額およそ2兆、2021年12月に債務不履行を発表。

 二、大手不動産の融創、負債総額およそ1兆、ドル債務の返済期限2022年3月、債務不履行を発表。

 三、大手不動産の世茂、負債総額およそ4000億、2022年3月に60億の信託支払いを延期、債務不履行を発表。  四、大手都市開発の華夏幸福、負債総額およそ2600億、2020年12月に52億の債務の期限切れを認め、債務不履行を発表。  

 今回の世茂グループの債務は、シンガポールでの株式上場時の元金10億ドルの優先手形4・750%が期限となり、未払い利息合わせておよそ10・24億ドルとのことで、今現在未納である。ただ、巨大会社である世茂は、この利息だけでぐらついたわけではない。  世茂は2020年上半期、3000億元という売上目標を見事にクリアーし、時価1300億香港ドル(約2兆2908億円)となる輝きの時を迎えたが、それから2年もたたない今、2021年の決算もいまだに発表されず、株取引も3か月以上停止され、この間に時価も167億香港ドル(約2942億円)で止まっている。つまり、株価が下落の一途をたどりそうな状態なのである。

2022年に入り、1月から5月までの契約済み販売額はおよそ342億元で、2021年同期の1217億元から72%もダウンした。コロナのぶり返しで期限切れの債務も支払えず、窮地を脱出するために他社同様に資産の売却に走り始めた。  

世茂はただ、2021年の第四四半期あたりから「売り出し」モードに入っており、売値を明記した資料で様々な物件をPRした。上海の中心部にあるIHGホテルや世茂広場、また深センの象徴的建物である深港国際センターなども含め、見積額は合計770億元(約1兆5804億円)にのぼる。  

かつてアメリカの地理系チャンネルの番組「メガストラクチャー」で「世界十大建筑」ホテルにも選ばれたIHGホテルは、22・5億元(約462億円)の売値をつけた。深センの深港国際センターは現在、151億元で売り出し中である。これらの案件の資産価値は合わせて629億元で、84億元が売却済み、残りは544億元(約1兆1167億円)である。世茂もこの売却で、93億元を「借り入れ」している。  

公表済みの世茂の資料によると、重慶の中心部の主要ビル群、上海の「世茂広場」、杭州の「智慧之門」、長沙の「環球金融中心」など、高さ200メートルを超えるビルを30件以上有している。しかし、とりあえずお金が必要である今、自社の誇るこれらの主要物件は商品棚に載せるほかなくなってしまった。

(中国経済新聞)