中国で流行する「両頭婚」

2026/06/9 08:30

近年、中国の一部地域、特に江蘇省・浙江省を中心に「両頭婚(りょうとうこん)」と呼ばれる新しい婚姻形態が注目を集めている。別称として「不進不出」「両家頭拼拼」「横平婚」などとも呼ばれ、主に一人っ子家庭で広がっている。これは伝統的な「男が女を迎える」結婚でも「女が男を婿養子にする」形でもなく、双方の原生家庭を尊重し、比較的平等な関係を築く婚姻スタイルである。

主な特徴

一、婚姻の形式:男性側が結納金(彩礼)を支払わず、女性側も持参金(嫁妆)を出さないのが一般的だ。双方の戸籍はそのまま変更せず、それぞれの実家との「つながり(黏性)」を維持する。結婚後も夫婦は男性の実家と女性の実家を交互に住み分けたり、両家にそれぞれ婚房を用意したりするケースが多く、必ずしもすぐに独立した小家庭を構えるわけではない。

二、子供の取り決め:二孩政策の影響を受け、通常2人の子供をもうけることが多く、1人目は父親の姓を継ぎ(男性側家庭が主に養育)、2人目は母親の姓を継ぐ(女性側家庭が主に養育)という形が一般的である。子供たちは両家の祖父母をいずれも「爺爺奶奶(おじいちゃん・おばあちゃん)」と呼び、区別しない。両方の家族が共同で子育てに参加する点が大きな特徴だ。

三、経済・生活面:いわゆる「AA制」に近く、財産は比較的独立させ、双方の家族が責任を分担する。これにより平等な立場が保たれ、双方の親が孫の世話に参加しやすくなり、高齢者介護や姓の継承、財産承継の負担軽減にも寄与している。

この「両頭婚」は、主に1980年代・1990年代生まれの一人っ子世代の家庭で登場した。伝統的な結婚では、女性が「嫁ぐ」ことで原生家庭から離れ、農村部の土地権利などを失うリスクがあり、男性側も高額な結納金の負担が重い社会問題となっていた。

「両頭婚」は、双方の家族が「子供を家に留め」、姓や財産を継承しやすくすると同時に、住宅購入などの経済的負担を軽減する仕組みである。少子化対策、高齢化社会への対応、ジェンダー平等への意識の高まりといった現代中国の課題に一定の解答を与えるものとして注目されている。

支持する意見:家族間の平等を促進し、争いを減らし、高齢者介護や出生率の向上に役立つと評価されている。
批判する意見もある。財産分割が複雑になりやすい、子供の感情的な分配が不均衡になる可能性、実際の養育責任や相続で不公平が生じるケースがあると指摘される。また、一部では伝統的な宗族観念に対する妥協に過ぎず、根本的な解決策ではないとの見方もある。

「両頭婚」は全国的に普遍的な現象ではなく、主に経済的に発達し一人っ子比率が高い江浙地域で流行している。実際の運用は家族間の話し合い次第で個別差が大きく、近年、社会的な議論が増えるにつれて、中国の婚姻観念が多様化していることを象徴している。

この現象は、急速な経済成長と社会変動の中で、伝統的な家族制度と現代の価値観をどう調和させるかという、中国社会の新たな課題を浮き彫りにしている。

(中国経済新聞)