天壇に刻まれた中米外交の記憶 現職米大統領が51年ぶりに歴史の舞台へ

2026/05/14 16:45

ドナルド・トランプ米大統領は5月14日、北京市の天壇(Temple of Heaven)を訪問した。習近平国家主席は祈年殿でトランプ大統領を出迎え、両首脳は祈年殿前広場で記念撮影を行った後、共に祈年殿を視察した。

2017年の初訪中時、トランプ氏が最初に訪れたのは故宮だった。そして9年後となる今回の訪中では、天壇が重要な訪問先として選ばれた。

故宮や万里の長城は、外国首脳の訪中時の定番視察先として知られる一方、天壇は歴代米大統領の訪問先としては決して多くない。1972年、リチャード・ニクソン元大統領が現職大統領として初めて訪中した際にも、天壇訪問は行われなかった。

その後、1975年にジェラルド・フォード元大統領が訪中した際に天壇を訪れて以来、現職米大統領による天壇訪問は実に51年ぶりとなる。

フォード氏はニクソン氏に続く2人目の訪中米大統領で、1975年11月30日から5日間の日程で中国を訪問した。当時、中米両国はまだ国交正常化前だった。フォード氏は万里の長城や頤和園、天壇などを視察し、天壇では「回音壁(エコーウォール)」の前で耳を澄ませる姿も見られたという。

    1975年、当時の米大統領フォード氏が天壇の回音壁を訪れた際の様子。

1984年には、国交正常化後初めて訪中した現職米大統領であるロナルド・レーガン氏が中国を訪れた。しかし、当時は会議日程の都合から、天壇視察は夫人のナンシー・レーガン氏が代行したとされる。

     1984年、ナンシー・レーガン氏が天壇を視察した際の様子。

古来、天壇は国家安泰や五穀豊穣を祈願する神聖な場所として位置付けられてきた。今回、中国側がトランプ大統領を天壇に招いた背景には、中国文明の長い歴史と文化的伝統を示す狙いがあるとみられている。

また、天壇は中米交流の歴史とも深く結び付いている。ジョージ・H・W・ブッシュ元大統領は、かつて北京の米国連絡事務所主任を務めていた時代に何度も天壇を訪れていた。

さらに、「中国人民の古い友人」とも呼ばれたヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は、公式資料によれば計15回にわたり天壇を訪問している。

キッシンジャー氏が初めて天壇を訪れたのは1971年10月25日。その後も訪中のたびに足を運んだ。1973年には、当時の外交部長だった喬冠華(きょう・かんか)氏と共に再訪。回音壁の不思議な音響効果を体験した際、キッシンジャー氏は「この壁のレンガは無線機のようだ。このレンガを1枚持ち帰って、君とのホットラインに使えないだろうか」と冗談を飛ばし、喬氏を笑わせたという逸話も残っている。

キッシンジャー氏と喬冠華氏が天壇を訪れた際の様子。(画像提供:天壇公式WeChatアカウント)

21世紀に入ってからもキッシンジャー氏はたびたび天壇を訪れ、2013年には「中国は常に新しく、常に印象深い」とのメッセージを残した。

2013年、キッシンジャー氏が天壇でメッセージを記した際の様子。(画像提供:天壇公式WeChat公式アカウント)

また、キッシンジャー氏は天壇の古木を見て、「米国は天壇の建物を再現できても、200年足らずの歴史しかない我々には600年の古樹を再現することはできない」と感慨を語ったとされる。

近年、天壇は単なる歴史遺産を超え、中米民間交流の象徴的存在にもなっている。

2025年1月には、米ユタ州の児童合唱団ワン・ボイス児童合唱団(One Voice Children’s Choir)が祈年殿前で中国語の楽曲「如願」を合唱し、中国のSNSで大きな話題となった。同年8月には、Ultimate Fighting Championship UFCのダナ・ホワイトCEO一行も天壇を訪問し、中国武術選手らと交流している。

さらに今年3月には、米ユタ州から訪中した教師・学生37人も天壇を見学した。

今回のトランプ大統領訪中は、米大統領として9年ぶりの中国訪問となる。そして天壇は再び、中米外交の象徴的舞台として世界の注目を集めることになった。

中国外交部の郭嘉昆(かく・かこん)報道官は11日、「中国は米国と共に、平等・尊重・互恵の精神に基づき協力を拡大し、対立を適切に管理することで、不安定な世界により多くの安定性と確実性をもたらしたい」と述べている。

「調和」や「豊穣」を象徴する天壇での会談には、分断が深まる国際情勢の中で、中米両国が協力の可能性を広げ、世界に安定をもたらしてほしいという中国側の期待も込められているようだ。

(中国経済新聞)