中国・深圳の電子商取引集積地として知られる華強北で、廃棄スマートフォン(業界では「環保機」と呼ばれる)の回収価格が急落し、市場に動揺が広がっている。これまで高騰していた相場が一転して下落に転じ、在庫を抱えた業者の間では不安が強まっている。
第一財経のの報道によると、華強北で約20店舗の中古スマホ回収業者に、少なくとも半数の店主が廃棄スマホの買い取りを「停止」していると回答した。市場の急変により、慎重姿勢を強めている実態が浮き彫りとなった。
業界関係者によると、中古スマホは大きく2種類に分けられる。ひとつは再利用可能な端末で、簡単な修理を施して再販売されるもの。もうひとつは故障・廃棄前提の端末で、回収後に華強北の業者を経由し、最終的には専門のリサイクル企業に送られる。そこで分解され、再利用可能なメモリチップや電池材料、貴金属などが回収される。
こうした廃棄スマホの価値が急上昇した背景には、世界的なメモリ半導体市場の逼迫がある。2025年後半以降、フラッシュメモリ価格は上昇を続け、需給はひっ迫。調査会社のデータによれば、直近3カ月で現物価格は累計300%以上上昇し、2026年第1四半期のDRAM価格も80~95%の高騰が見込まれている。

この影響で、廃棄スマホに含まれるメモリチップが「代替資源」として注目されるようになった。分解チップは新品の4~6割程度の価格で入手でき、供給も比較的安定しているため、コスト面での優位性が際立つ。年間6億~7億台の廃棄スマホが発生する中国は、「都市型電子資源」としての潜在力も大きく、回収価格の急騰を招いた。
実際、広東省広州市番禺区の回収業者によると、春節前に1台あたり10~20元だった廃棄スマホの価格は、春節後には40~50元に急騰。機種によってはさらに高値がつくケースもあり、市場は一時的な“過熱状態”にあった。SNSでも個人が中古スマホを売却する動きが広がり、供給争奪が一層激化した。
しかし、この熱狂は長く続かなかった。3月27日ごろを境に価格は急落し、わずか数日で2~3割下落。市場は一気に冷え込んだ。華強北では、すでに多くの業者が在庫を抱え、倉庫が満杯となっている。
長年この業界で働く業者の一人は、「在庫がさばけない以上、買い取りを止めるのが最も安全だ」と語る。ピーク時には1日で1万台以上、総額200万元規模の仕入れを行っていたが、現在は販売が滞り、資金繰りの圧迫が深刻化しているという。
別の業者も「参考価格は1台200元でも、実際には160元でしか売れない」と明かす。相場は日々下落し、「朝の価格が午後には通用しない」ほど不安定で、短期間で大きな損失が発生するケースも珍しくない。
価格形成の不透明さも問題だ。業界には統一的な価格決定機関がなく、各社は回収プラットフォームの提示価格を参考にするしかないが、実際の取引価格との乖離は大きい。相場が好調な時は上振れする一方、下落局面では数十元単位で乖離が広がる。
今回の急落の主因は、上流のリサイクル企業の需要が飽和したことにある。回収量が急増した結果、処理能力を上回り、受け入れ制限が生じた。実際、ある回収プラットフォームでは、1日の処理量が2025年9月の20万台から、2026年3月には150万台近くまで急増しており、需給バランスの崩れが鮮明となっている。
上流の需要縮小はそのまま下流に波及し、華強北の業者の多くが「とにかく在庫を早く処分する」ことを最優先としている。在庫を抱え続ければ損失が拡大するため、相場が下がり続ける中での売り急ぎが広がっている。
メモリ半導体不足を背景に急騰した廃棄スマホ市場は、短期間で急激な調整局面に入った。需給のひずみが解消されるまで、価格の不安定な状況が続く可能性が高く、市場参加者には一層の慎重な対応が求められている。
(中国経済新聞)
