中国の学校教師に高学歴化の波 修士・博士が70万人突破

2025/09/12 07:30

近年、中国の中小学(小学校・中学校・高校)において、修士・博士課程を修了した高学歴教師が急速に増加している。教育コンサルティング機関「麦可思」が発表した報告によれば、教育体系の基盤である中小学で、専任教師の学歴が「学歴水準の上昇」する現象が顕著になっている。

教育部が公表した2023年時点の統計によると、修士以上の学歴を持つ中小学教師はすでに70万人を超えた。具体的には、小学校で博士278人、修士16万3,288人、中学校では博士1,115人、修士23万人超。普通高校においては博士2,941人、修士30万7,300人に上る。さらに専門学校では博士715人、修士6万8,406人となっており、高度人材の存在感が増している。

特に注目されるのは、名門大学を卒業した修士・博士が中学や高校に教員として就職する事例の拡大だ。かつては北京大学や清華大学などの卒業生が北京や深圳、杭州といった一線都市・新一線都市の有名校に赴任するケースが中心だったが、現在では二線・三線都市、さらには県級都市の中学校にまで広がりを見せている。

例えば、浙江省紹興市嵊州市教育体育局が2024年に発表した採用予定者名簿には、厦門大学や吉林大学の博士をはじめ、清華大学、北京大学、浙江大学の修士・学士が名を連ねた。また、同年10月には陝西省神木市の中学校で新任教師47人のうち27人が修士卒という結果も報告されている。

専門家はこの動きを肯定的に評価している。中小都市研究院の牛鳳瑞院長は「名門大学の修士・博士が中学に入ることで教育水準が高まり、結果的に大学への優秀な人材供給にもつながる」と指摘する。急速に発展する科学技術分野に対応できる人材を育成する上でも、高学歴教師の存在は大きいという。

一方で、厦門大学経済学系の丁長発準教授は、背景に複数の要因があると分析する。第一に、高等教育の普及によって修士・博士の卒業生が増え、安定した「編制(公務員に相当する身分)」を求めて中小学へ流入している点。第二に、北上広深(北京・上海・広州・深圳)や杭州、蘇州、厦門などの大都市が早くから研究生を中小学に採用し始め、全体的に教員の学歴水準が底上げされた点。さらに、経済力のある中小都市や県城でも、安家費(住宅補助)や手厚い待遇によって人材を引き付けている。また、現職教員が教育学の修士・博士を取得するケースも増えている。

丁準教授は「今後、ベテラン教員の退職と若手の補充が進むにつれ、中小学教師に占める修士・博士の割合はさらに上昇するだろう。これは学校と個人双方にとって『ウィンウィン』の結果をもたらす」と展望する。名門大出身者にとって、中学では大学ほどの研究プレッシャーがなく、待遇も安定しているため、魅力ある選択肢となっているという。

高学歴教師の増加は、教育の質向上や地域間格差の是正につながる可能性を秘めている。今後も中小学における人材構造の変化は、中国教育の重要なトレンドとして注視されそうだ。

(中国経済新聞)