「卒業」=「失業」、中国が中高生に対して行う「人生の分岐」

2022/06/4 20:45

6月7日から8日にかけて、中国全土が全国統一大学入試(高考)の時期に入る。

中国教育部の発表によると、2022年の全国統一大学入試の受験者数は1193万人で、昨年より115万人多く、過去最多であった。

中国の大学入試は「一度の試験が人生を決定する」とされ、日本のような大学二次試験はなく、中国の高校生にとっては、この数日間が人生の中で最も重要な時期だ。

中国政府は中学卒業時から学生に対して「人生の分岐」を行っており、中学卒業者のうち普通高校に入学できるのは5割程度で、残りは中等専門学校、職業高校などに入り、ブルーカラー労働者になるための訓練を受ける。 したがって、多くの中国の幼い子供たちにとって、高校に入ることは人生最初の関門であり、この関門によって「ブルーカラー労働者」になるか「大学生」になるかが決まるのだ。

人生における第二の関門は、大学入試だ。

中国教育部のデータによると、2021年に全国の大学に入学した学生は1001.32万人で、全国大学入試の合格率は全体で92.89%だったが、通常の4年制大学への入学者はそのうちの41%に過ぎず、大半は短期大学などの「専門学校」に進学した。

つまり、大学に入学できたとしても、4年制大学に通えるのは10人中4人で、残りは短大で2~3年学んで卒業することになる。

中国の学生にとって、政府によるこの強制的な分岐制度は非常に不公平であり、半数の子どもたちから大学へ行く権利を奪っている。

しかし、14億人の大国に対して、すべての学生が大学進学を希望すると、大学が足りなくなるばかりか、一人っ子の若者は大学を卒業しても技術労働者として働こうとしないため、かえって中国の製造現場には技能型ブルーカラー労働者が不足し、中国の製造業の発展を妨げ、本当の製造大国になることが難しいというジレンマが発生している。

識字率の低い出稼ぎ労働者に頼っていては、中国製造業の水準を上げることはできない。 そのため、中国政府は技能型ブルーカラー労働者の育成に力を注いでおり、「中高生の半分に技術を学ばせる」というのが、中国の新しい国策だ。

2022年、新型コロナウイルスの影響は中国経済に大きな打撃を与え、多くの中小企業が倒産し、大企業は従業員の解雇を始め、中国の若者の失業率は18%に上り、今も上昇を続けている。

中国政府にとって、2022年に直面するもう一つの大きな課題である、全国の大学卒業生1076万人が6月に卒業する。しかし、中国人力資源保障部の統計によると、4月17日までの全国における大卒者内定率は23.61%に過ぎず、卒業生の4分の1(822万人)が就職浪人になってしまう。

そして、中国政府が就職問題解決のために取り組むべきは、この1076万人の大卒者だけではなく、実際、中等専門学校と高等専門学校の卒業生合わせて2,000万人近くにのぼる。

(中国経済新聞 山本博史)