中国の映画情報サイト「灯塔専門版」によると、2025年の夏休み枠(6月〜8月)の興行収入(前売り含む)が8月7日の時点で76億元を超えた。作品別に見ると上位8本は「南京写真館」、「長安のライチ」、「ジュラシック・ワールド/復活の大地」、「F1/エフワン」、「名探偵コナン 隻眼の残像」、「羅小黒戦記2」、「醤園弄・懸案」(She’s Got No Name)、「芝居小屋」の順であり、いずれも3億元以上となっている。
灯塔専門版によると、この夏は予定分も含めて計128本の映画が公開され、このうちドラマが45本、アニメが29本である。同社のデータアナリスト・陳晋氏は、「ジャンルが多岐にわたって多様化する観客のニーズに応え、何度も鑑賞したくなるようなムードになる」と述べている。
映画界ではこの夏、「VR鑑賞」という新たなスタイルの映画も登場している。現時点では興収の統計対象とはなっていないが、業界内では将来性が高いと見られている。

8月5日、上海のBFC外灘金融センターで、そのVR鑑賞式の「封神前伝」が上映された。中国初の女性将軍「婦好(ふこう)」の墓から出土した「国宝級文化財」を4K技術により再現しており、観客は3Dモデリングによってフクロウの頭のようなシャープなラインの青銅器に触れたり、司母辛鼎の中に頭を入れて3000年前の婦好の銘文を探ったりすることができる。
プレスデーであったこの日、メディア関係者がVRゴーグルを着用し、まるで火が燃え盛る戦場にいるかのような味わいをした。血のような赤い空が周囲一帯を覆い、臨場感あふれる映像で殷や商の時代の幻想と現実が混じる物語を、約40分にわたり体験している。
従来の映画は今も二次元の一方向的な語りであって、興収や観客の注意力などが集めにくくなっている。このような現状に対し、「封神前伝」のプロデューサーや企画を務めた興格伝媒の楊文紅会長は、「没入型の技術によって観客の体験感を高め、感情に訴える物語で共感を深めることが新たな映画のスタイルになりそうだ。婦好の感動的な物語を通じ、また観客が二次元から三次元への格上げを味わうことで、創作の限界を広げたいと考えている。『封神前伝』はまさにこうしたアイデアで生まれたものだ。ダイレクトに言うと、360度の没入型でやり取りできる映画は未来だ。観客も集まるし、さらなる消費も生まれることになり、今の映画という概念を一段と広げるものになっている」と述べている。

(中国経済新聞)