グッチ、上海ビスター・ビレッジのアウトレット店を6月2日に閉店

2025/05/29 07:30

上海で、新世界大丸百貨店とリール百貨店の2店舗を閉鎖したグッチ(Gucci)は、6月2日にビスター・ビレッジのアウトレット店も閉店することになった。店は今、大勢の客が駆け込み購入に押し寄せている。

グッチは中国で、去年の後半から店舗の見直しを加速しており、福州、大連、瀋陽、太原の4店を閉店した。業績の悪化に伴い親会社のケリンググループも思わしくなく、アウトレット店を軸に店舗の削減を進めており、高級路線への転換するための措置と見られる。これまで主にヨーロッパでアウトレット店を閉店していたが、主軸となる中国市場に「メス入れ」をしたことで状況の苦しさがうかがい知れる。

ケリングは最新の決算報告によると、2025年第1四半期は売上高が前年同期比14%減の38.83億ユーロで、地域別ではアジア太平洋が25%、ヨーロッパと北米がともに13%、日本が11%のマイナスだった。またこの3か月でグッチの10店舗を含め計25店舗を閉店した。ケリングは今や時価がLVMHグループの1/10以下であり、業績も株価も落ち込んだこの半年間、経営改善に向けて複数の不動産を売却したほか、先週は7.5億ユーロの債券を発行したと発表した。

高給品+ディスカウントという経営モデルで、コロナ禍を経てブランド品の在庫掃き出しや業績の安定化を果たしたが、アウトレット店で安値での購入に走る客が増える中、通常価格の店は厳しい立場に置かれている。

グッチは数年前にアウトレットでの売り込みに力を入れ、しばらくは業績アップに貢献したが、価格体系の乱れを招きやすくなった。このような問題を意識していた中、前任のCEOが2年前、ディスカウント方式への依存度を減らし、アウトレット市場から撤退して、ブランドバリューや通常の体系を見つめ直すとの方針を掲げた。

ビスター・ビレッジの閉店に伴い、上海に残るグッチの店舗はフィレンツェタウン店と百聯アウトレット店の2か所となる。

グッチは今年第1四半期の売上高が15.7億ユーロで、物価要因を除くと25%減となり、最近の四半期決算では最悪であった。ケリングのフランソワ・アンリ・ピノーCEO(François-Henri Pinault)は業績声明で、「今年は出足が不振」と表明したが、予想の範囲内でもあったという。

高給ブランド品は目下、軒並み業績不振にあえいでおり、市場環境も逆風が強まっている。リサーチ会社のBernsteinが4月に発表した最新レポート「世界のブランド品業界:シートベルトを締めよ」によると、2025年の世界のブランド品成長率は+5%から-2%に下方修正されている。

LVMHは第1四半期の売上高が3%減であったが、形勢挽回はケリングの方が困難である。売上高全体の4割ないし半分近くを占めるグッチを支援するため、CEOからアーティスティックディレクターまで経営陣の刷新を繰り返しているが、業績は依然「下落の一途」である。今年1月に就任したグッチのステファノ・カンティーノCEO(Stefano Cantino)は、ブランドイメージの陳腐化や商品の新規性不足といった問題を前に、立て直しを求めて高級化路線を堅持している。

ただ追い打ちをかけるように、アメリカのトランプ大統領がSNSで「6月1日からEUの輸入品に50%の関税をかけることが望ましい」と表明した。これを受けてヨーロッパではブランド品銘柄が値下がりしている。大手のエルメスやルイヴィトンはどうにか関税に対応できるが、価格に敏感なそれ以下のブランド品は値上げ策に託すわけにもいかず、苦境に立たされる。

ケリングは、2024年末時点で依然100億ユーロ以上の債務を抱えており、ブランド品大手4社の中で状況が最も困難である。

ケリングは、今年の初めから不動産売却に走り出した。ブランド品アウトレットのThe Mall Luxury Outletsの全株式をアメリカの不動産投資信託Simonに譲渡して3.5億ユーロを獲得したほか、パリの不動産3か所の株式合計から40%分をフランスの資産運用会社Ardianに8.37億ユーロで売却、そして先週には満期4.5年という7.5億ユーロの債券を発行すると発表した。

低迷状態がしばらく続くと見られるグッチとケリングであるが、7月にアーティスティックディレクターに就任するデムナ・ヴァザリア氏(Demna Gvasalia)は、果たしてうまく舵を切れるだろうか。

(中国経済新聞)