12月6日、TikTokの運営会社・バイトダンスが、中国の電子商取引(EC)最大手・アリババグループの大規模言語モデル(LLM)人材に対し、8桁の年収(数億元)を提示してヘッドハンティングしたとの情報が話題となっている。
アリババでLLM「通義千問」の技術代表を務めていた周暢(Zhou Chang)氏は、今年7月18日に起業のため退社すると発表したが、そのわずか2か月後にバイトダンスに転職したとの情報がひそかに流れていた。
11 月 13 日、アリババは周氏を相手取り、競業禁止契約に違反したとして仲裁申請をすることを決定したとの情報がAI業界内で急速に広まり、これについて「通義千問」の関係者は「事実だ」と表明していた。
周氏は2020年に、アリババ傘下の研究機関「アリババDAMOアカデミー(Alibaba DAMO Academy)」で、グループリーダーとしてマルチモーダル大規模言語モデル「M6」のトレーニングを始め、ChatGPTが普及した2023年にこのグループがM6をベースにLLM「通義千問」を開発した。これは今、「通義」シリーズの多くのAI商品における技術基盤になっている。つまり、世界で今、最もアリババのLLMを知っている人物がバイトダンスに鞍替えをしたわけであり、アリババからすれば人事の刷新となる。
この件は当初、7月中旬ごろに「周氏が起業のため退社見込み」との情報が流れたが、周氏は10月末にはバイトダンスに入社していたのである。バイトダンスのヘッドハンティングを手掛ける会社の社員によると、「起業のためというのは口実で、競業違反を恐れてのものであったが、結局隠し切れなかった。周氏だけでなく10人以上もの部下のメンバーが一緒にバイトダンスへ転職した」と話している。
バイトダンスは周氏に対し、アリババの職務制度から見てほぼ「2階級特進」で年俸も何倍となる8 桁台(数億元)を提示するなど、まず断り切れない破格の条件を差し出したとのことである。バイトダンスはまた、一緒に連れて来る元部下たちにもかなりのポストを与えている。豆包、即夢などのAI商品を抱え、動画生成モデルのSeaweed、画像編集モデルのSeedEdit、音声生成モデルのSeed-TTSなども用意しているバイトダンスは今年、生成 AIの スキルの大幅な拡大に取り組んでいる模様である。
(中国経済新聞)