2024年8月3日、中国本土で映画「解密」が封切りとなる。原作である同名小説の作者・麦家氏は映画について、「2回見たけれどもう1回見たい」と話している。
「暗算」、「風声」と並び麦家氏の「三部作」と呼ばれ、スパイ小説の「代表作」ともなった「解密」は、完成から11年で30以上の言語に翻訳され、100以上の国や地域で出版されている。麦家氏の小説はこれまでに4作が映画化され、8作がテレビドラマ化されており、そのどれもがスパイものとして人気を集めた。「暗算」と「風声」は複数の映画やドラマ作品となっており、今回の「解密」もどのように映画化するかが注目されていた。
映画「解密」は、天才数学者である容金珍(リウ・ハオラン演)が、暗号解読のプロとなり見えない戦線で活躍する姿を描いたものである。脚本家の経験がある麦家氏は映画化の難しさを知っており、「小説と映画は距離が非常に遠く、大事なのは容金珍という人物の世界へどのように入り込んでいくかだ」と述べている。
容金珍は、小説でも映画でも、暗号解読に人生をかけるという点で二つの意味がある。それは「紫密」「黒密」という具体的なもの、さらに奥深くにある心の暗号である。麦家氏は「数学と暗号の結び付け、それは抽象的かつ奥深いものだ。ストーリーの軸は数学の暗号解読法を述べることではなく、心の解読だ」と分析している。
小説のハイライトは、解読テクニックの表現や、解読と夢の関係の表現である。小説は、例えを通じて読者の想像を働かせる。例えば、容金珍がコードを暗号「紫密」と解読した部分について、小説では1万か所のドアから独自のものを見出すものとたとえており、暗号解読のプロセスはそれを開ける鍵を何度も磨くこととしている。また容金珍のインスピレーションは夢の中で生まれたものだ。ただし映像では、これらがネックとなる。赤の砂浜の夢については、制作から撮影まで90日間を要した。5000平方メートルのハウスを設営し、数十トンの砂で2000平方メートルの砂浜を作り上げた。また巨大なぼんぼりで海に日が沈むシーンをリアルに演出し、造波器で波を起こし、砂と波、光と波を織り交ぜ、色や光がリアルでファンタジーな質感を醸し出している。
麦家氏は、「小説から映画へ、芸術を描く暗号とは何か。それは真・善・美を揃って求めることだ」と言う。「真、それは一番大事なものであり、善と美は真実味がなくなれば偽善や空洞になってしまう。容金珍は架空の人物であり、物語とともに文芸作品を通じて評価され、感動を呼び、励みになる、それはつまり、この物語には本当の歴史、本当の情熱、本当の犠牲がつまっているからだ」と述べている。
(中国経済新聞)