中国交通運輸省によると、中国は貨物貿易の約95%が海上輸送であり、航行ルートや対象範囲は主要な国や地域におよび、乗組員の数や造船の市場シェア、船団の規模、海洋漁業なども世界の上位に立っている。2023年には海洋経済規模が10兆元(約222兆日元)近くに達している。
この中で、一般的に輸送規模が大きく低コストとされる大口の鉱産物について、最新の研究によると、輸送量の多い中国は海上輸送の依存度が諸外国を大きく上回っているという。船運を整備して安全性を確保することは、質の高い国内外循環という新たな発展の枠組みにおいて大きな意義があるとのことである。
中国交通運輸省の天津水運工程科学研究院におけるレポートでは、中国は遠洋ルートについていずれも重要なシーレーンを通過しなければならなくなっている。中東、アフリカ、西ヨーロッパ行きはマラッカ海峡やスエズ運河などを経由し、北上してロシア極東、韓国、日本の日本海側に行くには朝鮮海峡などを通る必要がある。よって、海上輸送の安全問題が問われるようになっている。
中国科学院地理科学・資源研究所、中国科学院大学資源・環境学院、清華大学環境学院の学者により作成された「戦略鉱産物船運ルート安全研究——鉄鉱石の場合」によると、中国は主要鉱産物の輸入で海上ルートへの依存度が高く、スムーズな航行を維持することが安全確保のための大切な策だと指摘している。
この報告によると、集中度が特に強いのが石油や金属鉱産物であり、主要鉱産物の輸入先はアフリカ南部、南東ヨーロッパ、豪・NZ、西アフリカ、東南アジア、西アジア、中東、南米東部などとなっている。このうち石油は中東産が80%以上、コバルト鉱は西アフリカ産が95%以上、鉄鉱石はオーストラリア産が66%以上で、銅の60%とニオブ(タンタル、バナジウムまたはジルコニウム)の96%は南米産、ホウ素は東南アジア産が60%、グラファイトは96%、クロムは85%、マンガン鉱は50%がアフリカ南部の産出品である。
さらに、主要鉱産物の輸入先が特定の国や地域に偏っていることで、西ヨーロッパルート、喜望峰ルート、豪・NZルートの3本が頻繁に船舶の往来する極めて重要なシーレーンとなっている。ロンボク海峡や喜望峰ルートは、鉄鉱石の輸入を安定維持する上で航行の安全を確保することが不可欠である。ロンボク海峡を通る船舶のうち70%以上がオーストラリアのもので、中国への鉄鉱石輸入全量の68%を占めている。喜望峰ルートはその次に重要であり、輸送量、航行量ともに30%前後を占めている。
(中国経済新聞)