医師が38年分の医療費請求書を焼き捨てる

2024/07/14 08:30

7月8日朝早く、江西省贛州市寧都県頼村の保健所の掲示板に、38年間分で計12万元(約266万円)余りの未払い医療費請求書を焼き捨てた医師の黄月明さんをほめたたえる知らせが発表された。「村の全住民へ」と書かれたこの知らせを多くの村民が見つめ、黄さんの思いやり溢れる行動を称賛した。

黄さんは今年59歳で、幼ないころから漢方医学に詳しい父親に漢方薬を学び、良い医師になろうと決めていたという。1987年に地元で漢方医の資格を取得し、村で診療所を開設して、たちまち地元民に親しまれ、信頼されるようになった。それから医師一筋で38年間歩み続けてきた。

黄さんの診察は、薬を少な目にして治療効果を上げ、出費を抑えるという際立ったスタイルであり、村人たちに親しまれ、人望も厚い。連絡すればいつでも来てくれるし、往診料もとらないので治療費も安く済み、漢方薬だけで病気やケガを治してくれるという評判で持ち切りである。

黄さんは今年5月、妻とともに38年分の処方を整理したところ、医療費の未納分が5612件あることがわかった。金額は合計123561.3元(約274万円)である。几帳面な黄さんは、「お金を払っていない心苦しさから体が不調になっても病院に足を運べず、一段と悪化し、やむなくまた診察に来た」人もこの中にいることが分かり、心を痛めてしまった。

そこで黄さんと妻はは6月5日、気軽に診察に来てもらえるようにとこれらの請求書を焼き捨てることに決めた。これを聞いた人から、「12万元(約266万円)余りは38年間汗水流して働いてたまったものだ。たとえ取り返せなくても、記念に残しておいたらどうか」とも勧められた。しかし黄さんは「燃やしてしまえば、また気兼ねなく診察に来てくれるし、すぐに治療できる。一生かけて学んだことをみんなの健康づくりに役立てていく、これこそ医師人生への一番の言い聞かせだ」と話している。

(中国経済新聞)