重慶、自動車生産台数が広州を逆転 年間で地域別トップに立てるか

2024/06/29 14:30

中国で、以前に「最大の自動車都市」であった重慶が勢いを取り戻しつつある。今年1-5月の生産台数は99.71万台で、広東省広州の94.73万台を抜いて地域別でトップに立った。これは決して偶然ではなく、長年にわたる取り組みの見直しやイノベーションの成果である。

重慶の自動車生産台数は、2014年に262.89万台で中国トップに立ち、2016年には315.62万台を数えた。ところが、その後数年間で大きく落ち込み、2019年には138.3万台まで減った。しかし最近は産業構造の見直しや技術革新を図ったことで徐々に盛り返し、2023年には232万台となっている。

こうした重慶の躍進について、火石創造産業研究院の馮雷副院長は、「上下一体の改革や革新の成果だ」と指摘する。製品面で言うと、各メーカーが積極的にマーケット拡大を狙い、ブランドイメージを一新した。最近デビューした「アバター」、「深藍(Deepal)」、「問界(AITO)」などは、テクノロジー、若さ、高級感を売り物に外資系ブランドへのニーズを徐々に奪おうとしている。また重慶は、新エネ車の普及という波に乗って技術の開発にも力を入れている。スマートコネクテッドの先行実施、走行距離の延長、電池の交換、水素燃料電池などについてかなりの力を蓄え、今年1~5月の新エネ車生産台数は前年同期より18.55万台、率にして16.7ポイント増えている。

また大手の参入も大きな力になっている。馮副院長は、ファーウェイと提携した「塞力斯(Seres)」について、「ファーウェイの技術やブランド、人気度、チャネルに支えられ、問界シリーズが記録的な売り上げを出した」と述べている。また二輪車大手である重慶力帆集団傘下の自動車メーカー「力帆汽車」は、組織立て直しを経て、2022年に吉利汽車の投資を得たことで息を吹き返し、EV用電池交換を主力事業に地元自動車産業へさらなる可能性をもたらしている。

2024中国自動車重慶フォーラムで広汽集団の曽慶洪会長が述べた、自動車界の「過当競争」に関する見解が話題となっている。長安汽車の朱栄華会長の見解に相対するもので、ともに自動車生産量1、2を争う広州と重慶の現状を示している。広州は2023年、生産台数が1.4%増の317.92万台でトップであったが、今年1-5月は前年同期比19.9%減であった。一方で重慶は16.1%増となっている。

馮副院長は広州の自動車産業の隆盛について、トヨタ、ホンダ、日産など外資系との合弁ブランドの存在を理由に挙げている。ところが、これら日系車は中国でシェアを落としており、産業も市場の急速な変化に見舞われている。広州には「埃安(Aion)」、「小鵬(Xiaopeng)」など新エネ車メーカーもあるが、マーケット戦略やブランドの属性について人気メーカーとは開きがある。新しい車種もさほど多くなく、世代交代も遅く、スマート走行についても見どころは少ない。

一方で重慶は、代表的なメーカーが新エネ車の普及を引き続きリードしており、生産量トップの原動力となっている。その中で長安汽車は、ここ2年間で新エネ車を相次ぎ打ち出しており、「長安」「UNI」「欧尚(Oshan)」「深藍、啓源(Qiyuan))「アバター」などでラインナップを充実化しており、売れ筋車種が続々と出ている。

また重慶は、自動車産業の土台もがっちりしている。馮副院長は、「重慶には完成車メーカーが20社以上、また部品関連会社が1200社以上あり、中国西部地域で自動車産業チェーンが最も整備されている。乗用車の生産能力は武漢(234万台)や広州(335万台)など主力域を上回り、500万台に迫る勢いだ」と述べ。

ただその一方で、広州も規模は依然として年間生産量ではトップを守れる力がある。また上海、深セン、陝西省西安、安徽省合肥なども急速に成長しており、特にBYD、VW、「江淮」などの新工場の本格稼働が見込める合肥は急激な伸びが予想され、侮れない存在となる。馮副院長は、「重慶は今年、年間トップに立つ可能性が高いが、対抗者も多い」と見ている。

(中国経済新聞)