アリババ、「月之暗面」(Moonshot AI)に1254億円を投資

2024/05/29 15:30

中国のIT大手アリババは2024年の決算報告で、「2024年度はAIスタートアップ企業の『月之暗面』(Moonshot AI)に約8億ドル(約1254億円)を投資し、見返りとして同社の株式約36%を取得する」と発表している。この投資は優先株によるもので、「月之暗面」およびその商品のKimi AIに対するアリババの高い評価や期待度が示されている。

アリババ・グループの蔡崇信(Joseph Chung-Hsin Tsai)会長と最高経営責任者の呉泳銘氏(エディー・ウー)は先ごろ、株主あてのメッセージで、「AIを事業の成長や改革への最も大切な力と見ている」と明言した。AIによりこれまでにない好機や課題をもたらされるものと信じており、「これから10年間は、AIによる革命を逃れられる業界などはない。AIは、古いやり方を守るようなことはなく、我々の起業への情熱や想像力を改めて燃やすものだ。われわれの事業はみな利用場面がふんだんにあり、すべての場面がAIを通じてさらなる価値を生み出すことができる。また、AIを揃えることでコンピューティングの需要が増え、アリクラウドが成長していく。AIは脅威ではなく、革命的なユーザー体験やビジネスモデルの牽引力として、大きな好機をもたらす。AIが日々もたらす持続的で恐るべき進歩についていけなければ、われわれは取り残される」とも述べている。

先ごろは、引き続き「月之暗面」への融資が進んでいて最新の見積額では30億ドル(約4703億円)に達したとの情報も出ている。関係者によると、テンセントや高榕創投などが新規融資をしているという。

「月之暗面」はまた、今年2月に紅杉中国(セコイア・キャピタル・チャイナ)、小紅書(シャオホンシュー RED)、美団(MEITUAN)、アリババから新たに10億ドル(約1568億円)以上の融資を得たとも伝えられている。この前の融資は2023年で、紅杉中国や真格基金(Zhen Fund)などから2億ドル(約314億円)以上を得ている。これらを合わせた段階で融資額は約25億ドル(約3919億円)となり、中国で大規模言語モデル大手の仲間入りを果たした。ChatGPTが世界に広まりつつある中、2月の「月之暗面」への融資は、中国国内では1ラウンドとして業界内で最高額のものとなった。

「月之暗面」は資料によると、2023年3月に設立され、エネルギーのAI化を果たすソリューションを模索しており、たちまちにして大規模言語モデルの主力企業となった。去年10月には漢字20万字の長文入力に対応するAIアシスタント「Kimi」を打ち出し、これに伴って関連するコンセプトが一気に広まっている。

「月之暗面」の主力スタッフは、Google Gemini、Google Bard、盤古NLP(Pangu NLP)、悟道(Wu Dao)など複数の大規模言語モデルの開発に従事しており、研究や開発を何年も経験しているという。

(中国経済新聞)