中国が今、抱えている問題とは

2024/01/17 20:30

中国国家統計局の最新のまとめによると、「2023年の中国経済は緩やかな回復途上にあり、9月までのGDP成長率は依然5%を維持し、年率に換算すれば5・4%に達する」とのことである。

 しかし、11月10日に行われた「グローバル問題を話し合う」第14回ビジネスサミットでは、中国の複数の有名経済学者が今の中国経済に対して重大な懸念感を示した。これまでになく疲弊しており、長いトンネルにはまる可能性が高いと見ているのである。

 中国国際経済交流センターの王一鳴副理事長は、「中国は今、輸出が止まり国内需要も低迷しており、加えて債務も重く生産過剰問題も深刻だ」と見ている。

 王副理事長は、受注がないので輸出が大きな打撃を受けていると言う。2023年1月~10月の中国の貿易額はドルベースで前年割れであり、10月の減少幅は9月より拡大している。さらに、西側諸国によるサプライチェーンのリスク除去、実質的な「中国外し」により受注の一部が奪われるという状況はすぐには改まらず、来年の輸出もかなり苦しい状態になると見ている。国内需要については、消費の回復が依然伸び悩み投資も大幅に減っている。外需、内需の両面で生産過剰に拍車がかかり、これがそのまま企業の倒産や失業者数の増加につながっている。

 また、3年間に及んだコロナ禍で不動産市場が崩壊し、個人の可処分所得も増えず、企業の利益も低下し、負債率も上昇しており、これによって経済や消費への見通しが揺らいでいる。中国経済について、2012年当時はサプライサイドに問題が出てマーケットニーズに追い付かなかった、というのであれば、今は需要側に問題が出て、作った物を買う人がいない、ということになる。こうした悪循環により経済成長をもたらすエンジンを失っている。

 王副理事長は、「中国政府は『エネルギーの新旧交代』を強調している。不動産の売上高は2021年のピーク時はおよそ18兆元だったが、今年は9月までで9兆元弱であり、年間でも11、12兆元で3分の1以上減となる。ではそれを何によってそれの分を埋めるか。新エネ車がある、と見る向きも多いが、部品も含めた自動車関連品目の売上高はせいぜい3・5兆元で、不動産の落ち込み分を補うことはできない」と指摘している。

 国務院発展研究センターの李剣閣元副主任は、今は「大きな刺激策により経済問題を解決するべき」と主張する人が多いと言う。「リーマンショックに見舞われた2008年、中国政府は4兆元の景気刺激策を打ち出し、地方も国有企業も民間企業も外資系もこれについて行った。今かりに同じような策を打ち出しても、地方政府は重い債務を抱えて借金暮らしの状態が続き、財政的に余力がない。国有企業も民間企業のしりぬぐいに追われて金を出せない。民間企業はお手上げ、外国企業も去り、今は刺激策を主張するだけでは何の役にも立たない。今大切なのは改革であり、希望を見出して自信をつけさせることだ」と言う。

 清華大学経済管理学院の白重恩院長は、「ここ数年、地方の債務は増える一方であり、特にこの3年間は過去になく膨れ上がっている」と言う。「政府は何をするにも『あらゆる代価を惜しまず』と並べ立てるが、その代価は返さなければならないもので、問題が今発覚してしまった」という。

 白院長は、「地方政府の財政問題は、政府の活動だけでなく企業や経済にも重くのしかかってくる」と指摘する。「中国経済の成長はえてして企業と地方政府が表裏一体であって、企業に対する政府の未返済問題が深刻化している。現在、企業における問題は地方の財政に関するものであり、地方政府は財政が苦しくなると企業への債務返済もできなくなり、こうして企業の活動に支障が出て最悪の場合は倒産する。また、財政問題の中で地方政府の動きにひずみが出て、これにより企業がかなりの打撃を蒙っている。地方の財政問題を処理できなければ、経済面でかなりのダメージを受けてしまう。よって、中国経済をいい方向にもっていくには、まず地方の債務問題を何とかしなくてはいけない」と言う。

中国発展研究基金会の張軍拡理事長は、「中国は、中間所得層の罠というリスクに見舞われている」と見ている。いわゆる「老後のたくわえ」問題である。

 中国はいまだ中間所得国であり、1人あたりGDPは1万2500ドルに過ぎない。よく言えばこれから追いかける潜在力やゆとりが十分、となるが、問題なのは過去40年間にはあった追撃や成長の力が今もあるのか、ということである。政府はすでに「質の高い発展」として、投資+不動産+インフラ建設という粗放型の成長策を断念し、ローレベルの製造業に頼った大量の輸出もやめ、さらには際限なく出てくる安価な農村の余剰労働力のシフトや投入にも頼らずに、ハイテク産業の成長やイノベーション、技術の進歩をバックにした経済成長を続けるという処方を打ち出している。しかし要注意なのは、過去40年間はアメリカを初めとする西側諸国による技術面の中国への制裁もなく、外国企業がどんどんと中国に技術移転したが、今の中国はそのような状態でなく、これから10年ないし20年間に自らの力で質の高い発展を実行するにあたり、別の様々な制約を受けるのではないか。

 まず、国際環境が予想だにしない甚大な変化をしている。米中両国政府の対立が悪化し、アメリカが先端技術で中国の首を絞めて技術教育や交流がとどまっている。技術移転について制限をどんどんと強化しているアメリカに中国とのデカップリングを狙う様子が見え、リスク回避の政治的圧力で外国企業の中国向け直接投資が急降下し、中国はサプライチェーンや貿易で長らく守ってきた主力の座が揺らぎ始めている。

 さらに、中国は民間経済の見通しが弱気で活力も不十分、イノベーションを目指す意欲も随分と後退している。

 また、中産階級で資産価値が減少し、特に不動産の資力が落ち込んだことで雇用や収益が不透明となり、社会保障も未整備で医療や介護の負担が増え、これにより財布のひもを引き締めて備えのための貯蓄に走る動きが出ている。

 李副主任は最後に、「昨日、Wechatで『通達の発表だけでは効果は望めないし、改革開放だけを語っても意味がない。1人1人、そして各企業、各業界がみな生の事例である。言葉を並べたてるより、むやみやたらにかみつく企業関係者をはじき出し、むやみやたらな罰金を吐き出し、むやみやたらな発言を規制すれば、自然と見通しも徐々によくなり、市場も徐々によくなっていく』とのコメントを送ってくれた人がいた。民間の企業関係者がどっしり構えるようになってこそ、中国経済は回復の期待が持てると思う」と述べている。

(中国経済新聞)